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3
ねぇ兄ちゃん。
今、どんな気分?
血の繋がった弟に、自分が変態だってバレちゃって、一体どんな気分?
五つも年下の弟に、体を押さえつけられて、一体どんな気分?
兄ちゃん。
僕だってショックだよ。あんなに恋い焦がれていた相手が、まさか自分の兄だなんてさ。もしこれが夢ならば早く覚めてほしい、そう思ったよ。
だけどさ兄ちゃん。
僕の兄ちゃんに、可哀想な兄ちゃんに、こんなことしたくない、しちゃダメだって思ってるのに
―――今までに無いくらい、僕、すっごく興奮してるんだ。
ごめんね、兄ちゃん。
「こ、こんなこと‥う、嘘だ、嘘だ‥ありえない、絶対ありえないっ‥こんなはずじゃ、なかったのに‥‥」
僕に両腕を強く掴まれ抵抗できない兄ちゃんは、震える声でそう言いながらかぶりを振った。
兄ちゃんを押さえつけるのは、とても簡単だった。
カーテンを締め切った日光の当たらない部屋に、一日中籠っている兄ちゃんの体は、筋肉が落ち、細く、とても貧相だった。部活動や体育で毎日のように運動をしている僕が少し力を入れただけで、兄ちゃんの体は簡単に拘束できた。
トイレの裏側の壁に兄ちゃんを追い詰め、細い両腕を掴んだまま、泣きそうになっているその顔を見つめた。
兄ちゃんの肌は相変わらず病的に白い。黒いクマだってある。でも、前見たときよりも、髪の毛が少し短くなってサッパリしている気がする。まあ普通の男子と比べればまだ長いけれど、それでも清潔感がある。乾燥してカサカサしていた唇も、今はなんだかしっとり潤っているように見える。
「髪の毛、自分で切ったの?兄ちゃん」
低い声で、優しく問いかける。
兄ちゃんは何も答えない。強く唇を噛み締め、目をキョロキョロと動かしている。
「リップクリーム、塗ったんでしょ、唇。」
やっぱり兄ちゃんは何も答えない。何を言っていいのか分からない、どうしていいか分からない、というように黙ったままひどく動揺している。
赤くなった目には涙の薄い膜が張り、眉が下がった、怯えきったこの顔。
今、目の前にいるこの兄ちゃんは、「クソババア」と母さんを怒鳴る兄ちゃんでも、「話しかけるな」と僕を睨む兄ちゃんでもない。
いじめられっ子だった、昔の泣き虫兄ちゃんだ。
幼い頃、近所の悪ガキに囲まれてからかわれていたときと、同じ顔をしてるよ、兄ちゃん。
ああどうしよう、ゾクリ、と体の奥が震えてしまう。
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