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''じゃあ、もう家に帰らないと、また明日ね''
ふぅふぅとまだ荒い息を繰り返す電話の向こう側に向かってそう囁くと、「うん‥じゃあ、明日‥」と寂しそうな返事が返ってきた。
いかにも名残惜しいとでもいうようなその声に、胸の奥がキュンと詰まる。
あぁなんて可愛い人なんだろう。
僕はスマホの画面に表示されている「ハルカ」という三文字を見ながら相手が電話を切るのを待った。しかしどうやら相手から切る様子はないので、こちらから通話終了の文字を押すと、ツー、ツーという高い電子音と共に現実に戻された。
興奮し熱くなっていた体が夏の夜の涼しい風にさらされて、無性に切ない気持ちになる。つい先程まで聞いていたというのに、もうあの声が恋しい。
少し低音のハスキーな色気のあるあの声。声自体に男らしさは感じるものの、どこか拙さの残る話し方。
ハルカさんは僕の声を好きだと言っていたけれど、それと同じくらい、もしくはそれよりも、僕はハルカさんの声が好きだ。
顔も職業も年齢も知らないのに、ハルカさんのあの声に妙な落ち着きと親しみを感じるのは何故だろう。
乱れた制服を整え、通学バッグの外ポケットにスマホをいれると、公衆便所から出て、この公園からそう遠くはない自宅への帰り道を歩いた。
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