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それから、私は高校2年になり、聡ちゃんは東京の大学の医学部に進学した。
最初は電話で会話もしていたが、忙しい聡ちゃんは徐々に時間がとれなくなり、やがてメールのやりとりをするだけになった。
それでも、忙しい合間にちゃんとメッセージを送ってくれる聡ちゃんは優しい。
聡ちゃんは盆正月も帰って来なかったが、年に一度おばさんの命日には帰って来た。その日だけは聡ちゃんと二人で過ごすことが出来た。
2年経ち、私は保育士になる為に地元の短大に進学した。
さらに2年後、無事に卒業した私は目標通り保育園に就職し、充実した毎日を送っていた。
聡ちゃんは勉強が益々忙しいようで、私は頑張っている聡ちゃんの妨げにならないように、連絡は週末だけにした。
ところが、そんな私の生活を一変させる事件が起きた。
先祖代々続いた家業が傾き、お父さんからもお母さんからも笑顔が消えた。
やがて借金は膨らみ、怪しげな人物が周囲をうろつき始めた。
そして、ついに私が勤める保育園にチンピラ風の男が姿を見せ、保護者の間で噂になり、私は保育士を辞めざるを得なくなった。
やがて身の危険を感じた私達は、全てを捨てて町を出るしかなかった。
聡ちゃんが戻るのを待っていた私にとって、苦渋の決断だった。
だけど、自分がもう聡ちゃんに相応しくないと気づいた私は、別々の道を歩むことを決意した。
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