罪と罰

1/1
前へ
/49ページ
次へ

罪と罰

6c3c9df0-4a06-4873-bb0f-2efc5ff0a8d1 同時多発的に三箇所で魔物を召喚する。 ミツヒデ達はそのつもりだったのだが… 現在のラーヘルは竜騎士4名全員が揃っていて、尚且つ3名が司令室の監視カメラで全てを観ていた。 3名の竜騎士が飛竜(ワイバーン)と共に先回りしておいて、間諜が笛を吹くと同時に[擬態隠蔽]の魔法を解いて姿を現わすことなどお手の物だった。 間諜が強力な攻撃魔法を放っても[反射迎撃]で跳ね返し、飛竜がブレスを浴びせかける。 間諜達は魔法使いなので即死しない限りは『ヒーリング』で「無かったこと」に出来るのだが、魔力量には限りがある。 隙を見て逃げ出すしかないのだが 簡単に逃げられる筈も無かった…。 それどころか魔力がドンドン吸い出された。 まるで近くに言霊鬼(エコー)が居るかのように…。 ついには消音(ミュート)魔道具でも使われているかのように声が出なくなった。 魔力も尽きて、声も出せず、剣や体術の闘いで竜騎士に敵う筈もなく… ミツヒデ達は猿轡をされた上、身体を縄でグルグル巻きにされた状態で地下牢に放り込まれたのだった…。 *************** 「退魔結界用魔道具の設置場所を秘密裏に変えて、偽物にすり替えておいて正解でしたね」 地下牢を見遣りつつサークダが感想を漏らした。 「ラーヘル所属の魔法使い達の寝室も変更して、認識阻害魔法で人形を人間に見せ掛ける術も上手くいったようで良かったです」 イオリさんも満足そうに頷いた。 「[反射迎撃]魔道具がロバートの洗脳波を無事に当人に跳ね返してくれたのも良かったな」 アイル叔父さんも安心したように頷いた。 「それにしても、こいつらはこうなる事を予測出来なったのか? 竜騎士を何だと思ってるんだろうな?」 と、ホデシュさんが頭痛を堪えるようにこめかみを押さえて言った。 「捨て駒ーーと言い切るには、ロバートとミツヒデはスペックが高めでしたよね」 サークダは首を捻った。 だがその件で考え込む暇もなく… イオリさんは捕縛した間諜達の処遇についてサッサと話を進めた。 「サツキさんとマリナさんに関しては私が洗脳しますけど。 男3人に関してはサークダさんの方で洗脳しといてくれませんか? 悪党を眷属化していって眷属が増えると解ると思うんですけど。 何のかんのいって『罰』とか『更生』に関して気を配ってやらなきゃならないので、あまり増えても面倒を見きれなくなるんですよ。 私としてはベン(アラント)のような大馬鹿だけは絶対面倒見たくないから、眷属化もしたくなかったんで本当に助かってます。 これも『ラーヘルのため』『世の中のため』ですからね頑張ってくださいね」 と、イオリさんはサークダに一方的に要求をして突き付けた。 サークダは異議申し立てしようと思ったのだが、叔父が微笑みながらサークダを見ている。 叔父のその視線が (私も悪党どもの面倒を見るのは御免だ。お前がやれ!) と強要しているのを見てとってサークダはガックリとうな垂れた…。 だれだって悪党と毎度顔を突き合わせて、悪党のためにいちいち『罰』やら『更生』やらを考えてやらねばならないのは嫌なのである。 (いっそ相手が女ならセクハラし放題でそれなりに楽しめるかも知れないのに…) と考えてしまうのが人情であるが… イオリさんはそうした下種な男心を見透かしていたかのように女子二人の眷属化を引き受けてしまっていた…。 不満たらたらのサークダの内心など全く配慮せずにイオリさんはマリナが大事そうに持っていた収納袋を取り上げた。 「マリナさん。…本当に悪い人って訳では無かったんでしょうね。この収納袋を必死で飛竜のブレスから守ってたみたいだからね…」 イオリさんが溜息を吐きながら 収納袋から中身を出すとーー 茉莉が眠らされた状態で転がり出てきた。 それを見てサークダが驚愕した。 「一体何でーー!」 「一緒に逃げようとして断られたから無理矢理拐おうとしたんですよ。 洗脳術を使える仲間が居れば当人の意思など後で幾らでも捻じ曲げられるでしょうからね」 私が溜息を吐きつつ、その時の状況を説明すると 「洗脳で意思を捻じ曲げるって…。スミマセン。 洗脳って何処まで相手を操れるものなのでしょうか? その、例えば私がこの子を洗脳して私に好意を持つように仕向けたら… 何処までご奉仕して貰えるんでしょうか?」 思わずサークダが素朴な疑問を呈した。 「ご奉仕、ね…」 イオリさんが猛吹雪のような冷たい視線を向けた。 (((墓穴掘ったな…))) と皆が他人事のようにサークダを切り捨てる視線を向けた中で サークダの下衆な男心からくる質問には叔父が答えた。 「答えは『何でも』だな。だが洗脳術の厄介な所は『眷属はご主人様に恋愛感情は持たない、持てない』という所にある。 眷属にとってご主人様は『絶対』だ。 命令さえすれば下半身の欲求を満たす事でも何でもしてくれるだろうが、決して心は手に入らない」 「そうなんですね…」 と、サークダは呟いた。 別にそんなに飢えてる訳ではない筈だ。 後腐れなく遊ぶ金は有るだろうし、城の下働きの女達もサークダが誘えばほいほいついて行く。 イオリさんの目がゴキブリでも見るような感じで (死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね) と言っているのが誰の目にも明らかな中 「き、訊いただけですよ?参考の為に」 と、サークダが苦しい言い訳をした…。 「ホデシュ様、マツリさんを部屋まで運んでおいてくださいますか?」 と、イオリさんが言うと 「それなら私がーー」 と思わずサークダは口を出したが 『ゴキブリ殺虫ビーム』の如き視線がサークダを貫いた。 サークダが怯んだ隙に 茉莉はホデシュさんによって運び出されて行った…。 「ほら、サークダさんの担当はコッチですよ?コッチ」 と、イオリさんが意地悪そうに片眉を上げながら、縛り上げられているムサイ男どもを指差してサークダに宣告した…。 *************** その後の反乱者達の処遇であるが… イオリさんは何故かマリナとサツキが互いに一目惚れしていたかのように暗示を施した。 「これで茉莉さんの貞操がマリナさんに脅かされる事はありません。 そしてサツキさんはトオルさんと恋人だったようですが… それを引き裂いて、サツキさんとマリナさんとくっ付ける事自体が、サツキさんとトオルさんへの罰にもなります。一石二鳥ですね」 微笑むイオリを前に誰もが ((((本当にそれだけかなぁ?)))) と疑問を持った。 余りにも楽しそうだからだ。 怖いもの知らずのリンタロウが 「単にGL《ガールズラブ》を鑑賞して自分が楽しみたいだけなんじゃね?」 とツッコミを入れたが 「リンタロウもGLを実践して楽しみたいのなら、彼女達のお仲間に加えてあげても良いですよ?3Pで頑張ったら?」 と、イオリさんがシレッと言ったところ。 「そ、それは…」 と、リンタロウは後ずさった…。 (所詮は処女兼童貞のヘタレである…) 「あと、提案なんですが。サークダさん。 貴方に洗脳を任せた3人組ですが、レビやハニナと共に[魔道具研究室]で働かせるのはどうでしょう? 生贄が居ないと[魔道具研究室]には並以上の容姿の男性はなかなか立ち寄れません。 生贄が居れば、皆様方にも比較的安全に立ち寄って頂けます」 と、イオリさんがトンデモない発言をした。 イオリさんが言う、レビとハニナは元はシュナハーカム軍特殊工作部隊に所属していた同性愛嗜好のイカツイ悪党二人組みのことだ。 レビ・バルアダンとハニナ・エターンザアム。 イオリさんに洗脳される前は、実は結構な大物だった。 相当に業深く、意志が強い。 彼らは洗脳されて攻撃性こそ削ぎ落とされたものの、性的嗜好だけは矯正ができなかった…。 「「「生贄…ですか…」」」 皆が怯んだ中で、アイル叔父さんは不思議そうに首を傾げた。 「ゼベドとかいう、以前アラントを襲撃した元小悪党がちゃんと生贄として当てがわれてた筈だろう?」 叔父が疑問を呈すると 「年季明けって必要だと思うんですよ。 ゼベドもそろそろ『レビ達の性奴隷』以外の役割を与えて有効利用してあげても良いんじゃないかと思って、別の任務を与えています」 とのこと。 どうやら鬼の目にも涙、というくらいにゼベドの様子は哀れを誘う様相へと進化(?)していたらしい…。 「これも犯罪者達を更生させる為に必要な『罰』です。 『心を折る』事が彼らを従順にして、結果的に彼らを更生させて幸福にするのです」 力説するイオリさんの笑顔が怖いのだが… 「そうなんですね…。それならあの3人は[魔道具研究室]のレビとハニナへの生贄にしましょう」 と、サークダもアッサリ納得した。 (うーん。トオルはなかなかのイケメンだし、一番悲惨な目に遭いそうだよな…。恋人だったっていうサツキに対してもそうだけど、本当に容赦ないよな…) と私は内心でドン退きしたが 考えてみれば… 連中が大勢の無辜の人々を殺そうとしたテロリストである事を思えば実は甘い処置なのかも知れない。 勿論、こうした処置が厳しく思えるのは危なげなくテロリストを制圧できたからだ。 一人の犠牲者も出さずに。 (もしも此方側に犠牲者が出ていたなら、「血で血を洗う抗争」に発展してたかも知れないな…) (まあ、「此方側」には犠牲は無かったけど、夜会の客達は相当数が怪我をしたんだよな…) 魔法使いの「ヒーリング」は元々の健康な状態のデータが無ければ出来ない。 反射迎撃によって顔面がズタズタになったアラント・カルターリは「ヒーリング」で自分自身の顔を元通りにできるだろうが。 客達の場合は元々の健康な状態のデータが無いので「ヒーリング」で治してやる事は出来なかった。 なのでイオリさんが[傷病平癒]の呪歌で治療するしかなかった。 客達は「教会の治癒活動が何故庶民達から熱狂的な支持を得ているのか」を身をもって悟る事になったのだった…。 今回の件で最も収穫があった点はアイル叔父さんがライラと離婚できる運びになった事だと言える。 「やっとあのゴキブリ女を追い出せる…」 と、叔父は心底から嬉しそうだった。 どんなに寛容な男でも 頭の悪い自己中女を擦りつけられて、しかも初めから誰かの子供を身篭っていて、尚且つ金使いが荒く、尚且つ他の男に入れあげていて、夫としての権利の行使さえも侭ならないのだとしたら… 「離婚したい」 「というか、消えてなくなれ」 と思ってしまう筈だ。 (叔父もよく我慢したよなぁ) と内心感心した。 ジット公爵がライラとロニセラを引き取るのは、愛人と実子なのだから当然と言えば当然なのだが。 今まではその「当然」が常に踏み躙られていたのだから、世の中とは恐ろしいものだ。 アラント・カルターリはまだ目覚めておらず、サークダの眷属化が成功しているか確認は取れていなかったのだが… 眷属化が上手くいっていたら「フィオナとも離婚できるかも知れない」という事で、叔父は実に清々しい顔をしている。 「そういえば。お義父様(とうさま)は何故フィオナさんと離婚したいのですか? ライラさんとは違ってフィオナさんはお義父様をお慕いしているように見えるのですが。 そんなに彼女の『欲求不満の末の不貞行為』が許せなかったんですか?」 と、不思議に思っていたことを訊いてみた。 すると 「まあ、表向きの理由はそれでいくだろうがなぁ…。アレは…フィオナはどうにも毛深くていかん。 見えるところは脱毛・除毛で毛深いのを誤魔化しているが。 肛門(アナル)周りまでびっしり生えてると挿入時に毛が絡んできて互いに痛い思いをするだろうからな。 毛深い女との楽しみ方は限定されてくるだろう?」 とのことだった。 「……」 (挿入時?楽しみ方?…まさか…) と内心で不吉な予感を感じた私の疑念を後押し、いや払拭する形で 「…アイル様。普通のse×をする人達にとっては肛門周りの毛が濃くても『大便の時にウ〇コが引っ付いて汚いんじゃないか?』という程度の認識しかしませんし、『挿入』がどうとかなんて考えませんよ?」 と、イオリさんがツッコミを入れた。 …要するに「尻毛が濃くてアナルse×の際に毛がペ〇スに絡んで痛いから離婚したい」ということらしかった。 超訳するとーー。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加