闇の八咫烏--011日目

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闇の八咫烏--011日目

 「やはり、そうでしたか」  「と、申されますと」  「首謀者の首級が手元にある。その首級を明智側の者に確認させる。それで大義の面目は立ちましょう。秀吉殿の関心は、主君の仇を討った、その名誉だけ。他には関心はあるまい。あるとすれば信長様の意を引き継ぐ手立てでありましょう。それが秀吉と言うお人ですよ」  首級の判別はつかず、結局、甲冑が決め手となった。斎藤利三は、光秀の首級を首塚として葬った。溝尾、木崎の首級も傍に。と、言うのが伝えられる大筋となっております。  忖度任せの一件落着。真実、事実、どうでもいい。大義名分立てば、それでいい。  あっしは思うんですよ。そもそも、明智光秀は何故、謀反を起こしたのでしょうかねぇ?信長の亡骸はどこへ行った?茶会に参加するはずだった家康の行方は?それに、秀吉が戻ってくるの早すぎる。さらに訃報を聞いたのに会談重視。何を捨て置いても駆けつけるのが常套。それをしなかった秀吉。そもそも手薄な茶会は何故に開かれたのか?勝者の都合で残された文献。隠蔽、改竄、語り草。それじゃ、納得がいかねぇや。ここは、閉ざされた真相の扉をぎゅぎゅっと、こじ開けてみやしょうや。ちょいと時を遡りますか、闇と言うやつに光を照らして。覗いてみると、ほらほら浮かんできやしたで真実ってやつが。それでは、謎解きの歴死奇行始まり、始まり。おっと、見えてきやしたで…。おやおや、町明かりと、人々が沢山…。それでは、蠢く鴉たちをとくと見て参りやしょうか。    ここは、近江国の門前町。坂本や下坂本に、たむろする輩たち。身なりは僧侶でも、中身は…、こりゃ、いけやせんや。鳥や魚、はたまた女を漁る。欲、欲、欲、金に群がるけしからん奴ら。遊ぶ金に困れば、糧米、灯油の横流し。法儀料、お布施もくすめる。盗っ人猛々しいとはよく言ったもので御税やす。権威を笠に賄賂の要求。高利で金貸し、甘露を堪能。脅し、たかりは当たり前。言うこと聞かぬ者は締め上げて、ありとあらゆる、悪行三昧。これでは、お天道様は許しやせん。それを眉間に皺寄せ、腸煮えくり返る信長。その信長はと言いますと、信仰に関心なし。時の権力者に擦り寄るイエズス会の宣教師ルイス・フロイスにも関心なし。あるのは異国の知識、物ばかり。利用出来れば、それでいい。信長、狙うは街道。重要、多用、それ、聖地。佛への信仰、冒涜すれば、朝廷への印象、悪くする。これは、厄介、この上ない。そこに現れた僧兵たち。蔓延る悪行は、信長の思う壷。大義名分、手に入れて、高笑い。僧兵たちの悪行、次々に調べ上げ、纏わる者も洗い出す。調べた結果は、見るも無残に荒廃し、乱れた町を炙り出す。僧兵と繋がり、甘い汁を啜る者、旅人を喰い物にする者、僧侶にあるまじき子を設け、その子が不良と化して、群れをなし、秩序など通るはずもない。これには信長も呆れ返った。
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