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闇の八咫烏--004日目
一方、命さながら、逃げ帰った落ち武者狩りの輩たち。住処に戻ると恐怖を拭い払うように、酒を浴びるわ浴びるわ。その騒がしさに不穏なものを感じた村の長老・小島三左衛門が訪ねてきた。
酒の勢いもあり三左衛門は、中村長兵衛たちの武勇伝をしこたま聞かされる嵌めに。いつものことだと受け流すも武勇伝だけでなく、腰を抜かして一度ならず逃げ帰った話も混じる。これはあながし嘘ではないのでは…と。それを確信させたのは彼らの寝言だった。
恐怖にわめき、おののく、彼らの逃げ惑う光景が、目に浮かびそう。それほどに凄まじいものだった。
長老の三左衛門は虫の知らせというのか、ただならぬ不安を感じ、夜が明けるのを待った。彼らの話が本当なら、単なる落ち武者狩りでは済まされまい。村にも災いが及ぶやも知れん。その心配が、体を突き動かした。
長老は、村人から信頼の置ける者を数人伴い、彼らが襲ったという場所に。雨は上がり、一番鶏が鳴く頃だった。半刻程掛け、その場所に辿り着いて辺りを見渡した。「左衛門さん」。村人の一人が指差す先には、三人の亡骸。しかし、その惨状は、長兵衛が語っていた内容と掛け離れていた。
「これはどう言うことだ」。長兵衛は、光秀の脇腹を刺して逃げたと言う。にも関わらずそこにあったのは、切腹した二人の亡骸と、首なしの亡骸。「あいつら、嘘をつきき上がったなぁ」。
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