闇の八咫烏--005日目

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闇の八咫烏--005日目

 辺りを見渡してまたびっくり。首なしの亡骸の豪華な鎧には、明智光秀の家紋である桔梗が雨に洗われ、鮮やかに浮き上がるように目に飛び込んできた。  三左衛門たちは、何か他にはないかと近くを探した。足跡があった。それを頼りに辺り探ると、不自然な土の膨らみが。まさかまさかと思いつつ、そこを掘り返す。「わぁーーー、これは…」  それは、土と血が滲んだ布に包まれた何か。もしやもしやと布を剥がしてみて、またびっくり。現れたのは判別不可能な首級。近隣にある武家の家紋なら分かる。それが首級となると…。その首級が壊されていなくても侍との接点がない、況してや高級武士など三左衛門たちには無縁の存在。当然、明智光秀であると判断出来るはずもなかった。  三左衛門は、その処理について途方にくれ、腰から力がスーッと抜け落ち、その場に座り込んでしまった。  その時ですよ、遠くの方から、ド・ド・ド・ドォーと幾多の足音が近づいてきた。三左衛門は、身の危険を感じながらも、腰が抜けて、動けずに。  足音の正体は、明智光秀の一行の有志だった。彼らは、深夜の山道の出来事に不信感を抱いていた。夜が明け、雨も上がった。にも関わらず先頭を行く者が、蓑を取らないで俯いていた。それを不審に思った者が様子を伺っていたのです。怪しすぎる、声を掛けてみた。しかし、返事がない。よく見れば、身なり、体格も違う。「御免…」。そう言うと、蓑を剥ぎ取った。足軽が、怯えたように佇んでいた。足軽から事情を聞いた武士たちは、半狂乱に。幾人かが、不審な出来事が起こった場所へと向かった。その武士たちと三左衛門が出くわしたのです。  「そなたら、何をしておる」
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