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闇の八咫烏--009日目
斎藤利三は、光秀の死を如何に隠蔽できるかを思案していた。このままでは土民に葬られた情けない武将として後世に残る、それだけは避けたかった。
そこで利三は、光秀の明確な死を闇に葬ることで、真相追求を逃れようと考えやした。亡骸が光秀と断定できなければ、織田側に都合のいい筋書きが用意されるはず。その際、土民に葬られた武将に信長が討たれたではねぇ。そりゃ、織田側の面目が立ちやせん。それなりに名の通った武将が表に出てくるはず。後見者争いの決め手にもなりますでしょうから…そう、利三は考えたのでは。そこで利三は、溝尾茂朝と木崎新右衛門の気持ちを受け継ぐことが最善策と考え、運搬の一行を止めさせ、溝尾殿、木崎殿の気持ちを代弁するかの如く一行に訴えたのです。一同の気持ちも同じだった。確信を得た利三は、溝尾、木崎の首も撥ね、その首級の顔の皮を剥ぎ、筵に土と一緒に入れ、腐敗を進める細工を施した。兎にも角にも、光秀が亡くなった事は事実としても、それが間違いなく本人であると認めさせたくない気持ちが、滲み出ておりましたなぁ。利三の行動は、面通しを潜り抜ける事、それが一番の目的に思えてくるから不思議で御座います。
三首塔宜しく、三つの首を担いですたこらさっさ。生首、生首、一掛け、二掛け、三掛けて、仕掛けて如何なされるお侍さん。嘘、嘘、嘘も日々つき続ければ真実に見えてくる。それじゃ、真実なんて作ればいいじゃありませんか、都合のいいように。虚像、偽造、それ、捏造。悪い奴らは必死なんです。それに引き換え善人面ときちゃー、無気力、無関心、無責任。それで、いいんじゃありませんか、皆さん、忙しそうですから。ほらほら、今日も真実とやらが作られていまっせ。懲りもせずに、ご愁傷様。
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