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爺ちゃん。
そう声をかけると、ゆっくりとこちらへ向き直る。
皺くちゃな顔で笑い、お帰りと声をかけてくれた。
「ただいま。」
そう言って歩み寄ると、洗い立てのトマトを一つ放り投げた。
今朝とってきたばっかや、美味いぞ。
井戸の水でよく冷えたトマトはとても美味しく、爺ちゃんの愛情がいっぱい詰まってた。
いつからこんなに涙もろくなったんだけ。
気づけば頬を流れる涙。
美味しいと言って、それを隠すようにトマトにむしゃぶりついた。
玄関には信楽焼きのたぬきの置物。
家の中は懐かしい匂いがした。
いつまでおるんや?
ドジョウ掬いに野菜を入れた爺ちゃんが後ろに立っている。
「ケリがつくまで。」
爺ちゃんははてな顔を浮かべていたが。
くすっと笑い。
ほうか、ほんならさっさとつけてこい。
そういって俺の背中をぽんっと叩いた。
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