私の知らない私でいるとき

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「さーこってばー」 「何ってば」 「かまってー」  追加のフライドポテトが必要なようだ。  ナツだけが友達の私と違って、ナツには友達がたくさんいる。だから、私ばかりと一緒にいるわけではなく、休み時間は他のグループに混じって喋っていたり、休日は集団でカラオケに行ったりもしている。  あちこち好きなように回って、気分が向いたら甘えてくるあたりが猫っぽいと思う。そんなナツが私に割く時間は、全体でみると少ないのかもしれない。  でも、それでいい。だって、 「ナツ」 「んーん?」 「呼んだだけ」  ナツのことをナツと呼ぶのは、私だけだから。たぶん。  そして、 「ごくん……えへへー、さーこにナツって呼ばれるの好きー」 「……あっそ」  私が私の知らない「さーこ」でいられるのも、ナツの前だけだ。
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