私の知らない私でいるとき

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「さーこさーこ」 「何」 「呼んだだけー」 「あっそ」  ナツはときどき絡みがダルい。  私の唯一のと言っても過言ではない友達、ナツこと菊池夏美。高一の春に出会ってから、もう一年半の付き合いになる。  周囲と接点を持とうとしなかった私に、ナツがやたらと話しかけてきて、とあるきっかけで仲を深めることになって。まあ、詳しいことは今はいいだろう。  とにかく、半分は引きずられるように、もう半分は寄りかかるようにして、私はナツとずっとつるんでいる。 「さーこさーこ」 「何だよ」 「呼んだだけ」 「……」  私がずっとスマホを見ているのが気に食わないらしい。ナツは謎にスマホが嫌いだ。持ってはいるし普通に使ってもいるのに。  またむやみに呼ばれないよう、左手でフライドポテトを数本つまんでナツの口に突っ込んでおいた。 「少ない!」  私はお前の専属メイドか何かか。  さっきより多めにポテトをつかんでナツの口に押しつけながら、ふと思う。 「さーこ」って呼ばれるようになったの、いつだったっけ。
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