狂気の選択

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二  「日本人なんだから、日本人の仮装をしなければな」  そう呟きながら、男は呼び出す悪霊を慎重に選ぶ。 映画研究サークルのメンバーの一人は「玩具屋に行ったけど、まだ仮装が決まらない」とラインで返事をして来た。選べたとしても海外の映画のキャラクターか何かだろうという推測は立った。 日本人がする仮装なら『リング』シリーズの山村貞子や『呪怨』シリーズの佐伯佳也子が手堅いところだが、仮装する前に女装しなくてはならない。 マニアックに佐伯俊男という選択肢もあったが、浮かんですぐに却下される。ブリーフ一丁で仮装というには程遠く変質者と間違われてしまう。  「日本人キャラクターの仮装は他に何があるだろうか?」  横溝正史の『八つ墓村』の多治見はどうだろうか。頭に懐中電灯二つ付けて、猟銃と日本刀を持つ『犬神家の一族』の犬神佐清は、白マスク被るだけでシンプルすぎる。 江戸川乱歩の『人間椅子』はどうだろう。骨だけの椅子に隠れて、座った人間にいたずらするんだ。しかし、誰も座らなければ仮装の意味がない『盲獣対一寸法師』の何れかはどうだろう。 盲目の盲獣のように、触覚芸術をうたいながら集まった女たちに、いたずらをするのはなかなか面白いかも知れない。  「決まったな」  男は、仮装用のマスクコーナーから離れ、玩具のサングラスの置いてある場所へ向かう。
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