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三
「これ、面白そう」
白塗りに赤いチークを重ねた腹話術人形の仮面を眺めて、港町はるみはくすりと笑う。
『ソウ』シリーズに登場するジクソウ。ことジョン・クレイマーのマスクだ。仮装というより、この仮装だからできるいたずらに興味を示した。
ハロウィンパーティーの参加者全員に、ソウがしたような罰ゲームを与えて、驚かせるのだ。
どんないたずらが良いか、思案を巡らせる。
いちおモラルに反しない程度に「好きなコの名前を言わせる」とか「初体験はいつか言わせる」や「嫌いな奴のいやなとこをぶっちゃけさせる」というのは、存外盛り上がるかも知れない。
映画研究サークルの会長の家でやるので、ものを使った罰ゲームは出来ないが、これなら「ちょっぴり勇気を出せば」みんな出来るだろう。
はるみは頷くと、ジクソウの仮面を商品棚から手にとった。
サスペンス映画の中に入ったような感覚になる。観ている時のハラハラどきどきとした感覚と、どんでん返しをされた時のどっきりが
癖になる。のみならずミステリーを観たような整合性も見応えを感じる。
海外ホラー担当の瀬戸海と違い、日本映画担当の御堂とは異なり、サスペンス担当を選んだ理由はそこにある。
「さてと、帰ったら、録音の準備しなきゃね」
自身もいたずらを考える中、他のメンバーがどんないたずらをするのか、楽しみになってくる。
トリック・オア・トリートの謳い文句により年に一日だけあらゆるいたずらが許される、そんなハロウィンは、まるで年に一日、殺人を含むあらゆる犯罪が合法化する、サスペンス『パージ』のようだとはるみは思った。
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