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「 あ、佳乃ちゃん、良かった〜、 無事そう…って訳じゃないねぇ、その顔は… 」
「ご、ゴローさんっ!!?」
最後にスポットライトを浴びたのは、予想外の斜め上の上くらいの人物…
アンカサの一番の常連さんで、創太郎が黙っていなくなった後も店の契約書関係の書類を持ってきてくれたり、励まし、時には孫を心配する様に気遣ってくれていた、いつもニコニコ朗らかなゴローさんであった。
ゴローさんが店内へ進むと、最初に現れた気の抜ける話し方の30代ギリギリ入ったくらいの容貌の男が、気だるげにドアの下の真ん中へ一歩移動して、やる気なさそうにその場に立った。
何故だろう…
覇気はないのに隙もまた無さそうだ。
これならアミも逃げられないな…と漠然と感じる。
ふと、ゴローさんが先生が転がった方をちらりと見て満足そうに海星を見上げた。
「君が守ってくれたんだねぇ」
いつもと変わらずにこにこしているのに、何故か有無を言わせない貫禄を本能で感じ取らされてそわそわしてしまう。
海星は何も言わなかったが、佳乃が"ゴローさん"と呼んだ時点で警戒を解いていたようだ。
心なしかホッとしたような空気を纏っている。
佳乃の世間話で度々出てくる名前だ。
姿を見るのは初めてだが、ゴローの事は割とよく知っていた。
「え、あのゴローさん…
全然話が読めないんですけど、、
ゴローさんは、なぜここに…?
それにこの方たちは… 」
入り口に待機している二人のスーツの男に視線を移す。
「あぁ〜、この人達はねぇうちのスタッフだから気にしないでいいよ、
こういう時色々動けるのがいた方が何かといいからねぇ。」
確かにゴローさんだけより、この場においてはとても心強い存在である事は確かだ。
「佳乃ちゃんから体調悪くて明日休むかもってメッセージ見たとき、なんかちょっと違和感を感じてねぇ?
どうしようかなぁと思って電話したら、あのエレナちゃんって子が出たじゃない?
しかも何かあの子必死になんて言おうか考えてる様な話し方でさ。」
エレナがどうやって誤魔化そうか電話越しに格闘している姿を容易に想像できる。
「そしたらねぇ、たけさんからアンカサの前に見たこと無い車が停まったけど誰か知ってる?って電話が来たんだよねぇ」
「たけさんが?」
「うん、雀荘から出る時にチラッと見えて気になったみたいだね、でもお手柄だったよねぇ、たけさん
深夜まで雀荘にいるってのも、ある意味警備の一貫になるかもねぇ」
「それでゴローさん、わざわざ見に来てくれたんですか?!」
「うん、まぁ、でも出先で外にいたからついでみたいなもんだし気にしないでよ」
登場もベストタイミングであり、佳乃達にとっては救世主だ。
気にしてくれたたけさんも、わざわざ様子を見に来てくれたゴローさんも、ゴローさんに嘘を疑われたエレナも、その全てが呼んだ奇跡だと思った。
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