37人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの… げんさん、あの人はどうなるんですか?」
まだげんさんの立ち位置がよくわからず、一体これからどの様になるのか気になる。
「まぁ、逮捕になるな」
「逮捕?」
逮捕と言う事は、げんさんは強面の怪しい人…では無く、捕まえる方の人だったと言う事だ。
「あれ?佳乃ちゃん知らなかったの?げんさんは警察だよ。」
ーーー知らなかった…
自分から職業の話をして来ない客には、あえて佳乃から聞かないようにしていた。
常連さんに関して、確かに知らな過ぎではある。
だが、ここまで来てふと今日の一連の出来事を思い出す。
ミツルに関しての海星の行動は、罪に問われるだろうか。
「げんさんはちょっと特殊な方の警察だからねぇ、心配ないよ、ねぇ?」
そんなに表情に出ていたか、と驚く程、佳乃の考えていた事がゴローさんに見透かされている。
"ねぇ?"と言われたげんさんの方は、"ふん…っ"と少し迷惑そうな顔をゴローさんに向けるも、否定はしなかった。
「二人にも勿論話は聞かなきゃいかんが、余計な事は特にどうこうするつもりは無い。」
そう、佳乃と海星を順番に見てげんさんは言う。
「だが、君は別だ、ソノダアミ。色々調べは付いてるからな。」
「え…、アミは何も…っ」
本当に自分の罪を自覚していないのか演技なのかはもうわからないが、きっとげんさん達がこの後の事はきちんとしてくれるだろう。
パタパタと階段を降りてくる足音にふと視線を向けると、女性の刑事だろう、素早くアミの腕を掴んで出口へと促した。
確かにアミのした事は簡単に許せることでは無いし、長年エレナが受けた仕打ちを考えたら同情は出来ない。
だがいざこうやって連れて行かれる後ろ姿を見ると、未成年の女の子としてはあまりにも惨めだ。
「どこで間違ったんだろうねぇ…
子供はねぇ、1人で成長するんじゃないだよ。
周りの大人が愛情を持って示してやらなきゃいけない。
あの子もまた、小さな頃から理解出来ない"困惑"を抱えていたのかもしれないねぇ… 」
静かになった扉の向こうを見つめながら、なんとも言えない気持ちで溜息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!