6人が本棚に入れています
本棚に追加
「サトくん。おばあちゃんをだますなんて、やりすぎなんじゃない」
こんなこわい顔のミコちゃんは初めてだ。サラサラの髪の毛が、怒ったネコの背中みたいに、ぶわっと逆立って見えた。
「ほら、なんとか言いなさいよ」
こんなこわい声も聞いたことがない。ミコちゃんはお姉ちゃんの貫録で、ぼくにぐいぐい迫ってくる。
「ごめんなさい。だれもミコちゃんの秘密を教えてくれなくて」
「もーう。しばらくおしゃべりしない」
口もとにギュッと力が入って、ぷっくりしたくちびるがぺっちゃんこ。
あごに梅干しの種みたいなグリグリをひっつけて、ミコちゃんは部屋から出ていった。
ぼくはミコちゃんが好きだ。
とってもやさしくて、とってもかわいい。
六つも年上なのに、小学生のぼくから、かわいいなんて言われてもニコニコしてるところが、またかわいい。
きょうは、ぼくがむりやり秘密を探り出したせいで、ごきげんがななめに走っていっちゃったけど、謎が解けたぼくは、ミコちゃんのことがますます好きになった。
最初のコメントを投稿しよう!