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ミコちゃんが怒ったあとの晩ごはん。
おばあちゃんとミコちゃんとぼくのあいだに、気まずい空気がただよった。
ミコちゃんのことをまっすぐに見ることができない。
息をするのも苦しくて、プレッシャーに負けたぼくは、おばあちゃんの得意料理、ヒラメの煮付けの骨をのどに刺してしまった。
こんなとき、いつもならミコちゃんが助けてくれる。
つるつるのおでこをぼくの鼻の頭にひっつけて、口の中をほら穴探検。毛ぬきを使って、お宝を発掘する。
ぼくが小さなころからずっとずっと、ミコちゃんはぼくのめんどうをみてくれる。
だけどきょうは、のどの奥を「えへんえへん」と鳴らしても、ちょっと横目でのぞくだけ。
あとは、長いまつ毛を自分のお皿にむけて、ヒラメの白身をおはしの先で器用につまみ出している。
しようがないので、ごはん丸のみ。
「よくかまないと、太るわよ」
そんなことを言うお母さんの腕はムチムチだ。となりに座っているおばあちゃんもコロコロ。ぼくの右にいるおじいちゃんも、どっしり。きょうは帰りの遅いお父さんも、まるまる。
ぼくだって負けてない。小学四年生にして五十キロを軽く突破してるのは、保健の先生にわりと問題視されている。
こんな太っちょ一家の中で、ミコちゃんだけがスマート。
手も足もすらーと長くて、背だって高い。細い首の上に小さな顔がのっていて、その頭ひとつ分ぐらい、ぼくと差がある。
本当に家族なの? って思うぐらい、一人だけ、ほっそりしてる。
だけど、くりくりのドングリまなこはぼくとそっくりだから、ミコちゃんが実はよその子だってことはありえない。
もし、ミコちゃんが本当のお姉ちゃんじゃない、なんてことになったら、ぼくはきっと泣く。
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