ミコちゃんのひみつ

3/10
前へ
/10ページ
次へ
 ミコちゃんがスマートなのには、はっきりとしたわけがある。  それは、お菓子を食べないから。  クッキーやビスケット、ケーキやポトテチップスには見向きもしない。甘くてひんやりなアイスの誘惑もなんのその。  洋風なお菓子だけじゃなくて、おだんごやおせんべいだって口にしない。  ぼくが小学校に入るまで、おやつの時間は仲良くいっしょに食べていた。  お母さんは、ぼくの前にはシュークリームとジュース、ミコちゃんの前には煮干しと牛乳を置いた。  ぼくがバウムクーヘンのときは、こんぶだった。豆大福のときはスルメ。アイスキャンデーをかじってる横で、キュウリをポリポリ。  シブすぎるおやつに、何度も何度も「なんで?」って質問をぶつけたけど、返ってくるのは素敵な笑顔ばっかり。 「これはね、超重要秘密なの」と、人さし指でふたをするつやつやのくちびるに、ぼくはみとれてしまう。  お母さんやお父さん、おばあちゃんやおじいちゃんも、理由は知っているようすなのに、ぼくにだけは真相を明かしてくれない。  しつこく聞いても、とつぜんとぼけたり、聞いてないふりをしたり、「もっとやせなくちゃね」とぼくに言ってるんだか、自分に言ってるんだかわかんないことを口にして、話をあさっての方向に蹴り飛ばす。  ミコちゃんは甘いものがきらいなわけじゃない。お芋やフルーツを口に入れるときは、とてもうれしそう。  だのに、どうしてお菓子は食べないんだろう。  年ごろの女の子がお菓子を食べないって、一大事でしょう。  お姉ちゃんのことならなんでも気になるぼくは、定期的にミコちゃんの秘密を知りたい気分が噴火する。  かつての聞きこみで「むかしから、食べないよ」とごまかすお父さんに、「幼稚園のころは、チョコが好きだったんだけどね」ともらしたおばあちゃんのセリフを、ぼくは聞き逃さなかった。  長年の調査で集めたネタをつなぎ合わせると、ミコちゃんはどうもぼくが生まれたころから、お菓子を食べなくなったみたいだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加