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ミコちゃんがスマートなのには、はっきりとしたわけがある。
それは、お菓子を食べないから。
クッキーやビスケット、ケーキやポトテチップスには見向きもしない。甘くてひんやりなアイスの誘惑もなんのその。
洋風なお菓子だけじゃなくて、おだんごやおせんべいだって口にしない。
ぼくが小学校に入るまで、おやつの時間は仲良くいっしょに食べていた。
お母さんは、ぼくの前にはシュークリームとジュース、ミコちゃんの前には煮干しと牛乳を置いた。
ぼくがバウムクーヘンのときは、こんぶだった。豆大福のときはスルメ。アイスキャンデーをかじってる横で、キュウリをポリポリ。
シブすぎるおやつに、何度も何度も「なんで?」って質問をぶつけたけど、返ってくるのは素敵な笑顔ばっかり。
「これはね、超重要秘密なの」と、人さし指でふたをするつやつやのくちびるに、ぼくはみとれてしまう。
お母さんやお父さん、おばあちゃんやおじいちゃんも、理由は知っているようすなのに、ぼくにだけは真相を明かしてくれない。
しつこく聞いても、とつぜんとぼけたり、聞いてないふりをしたり、「もっとやせなくちゃね」とぼくに言ってるんだか、自分に言ってるんだかわかんないことを口にして、話をあさっての方向に蹴り飛ばす。
ミコちゃんは甘いものがきらいなわけじゃない。お芋やフルーツを口に入れるときは、とてもうれしそう。
だのに、どうしてお菓子は食べないんだろう。
年ごろの女の子がお菓子を食べないって、一大事でしょう。
お姉ちゃんのことならなんでも気になるぼくは、定期的にミコちゃんの秘密を知りたい気分が噴火する。
かつての聞きこみで「むかしから、食べないよ」とごまかすお父さんに、「幼稚園のころは、チョコが好きだったんだけどね」ともらしたおばあちゃんのセリフを、ぼくは聞き逃さなかった。
長年の調査で集めたネタをつなぎ合わせると、ミコちゃんはどうもぼくが生まれたころから、お菓子を食べなくなったみたいだ。
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