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「ごちそうさまでした」
おかわりしたごはんをひと粒残らず平らげて、ミコちゃんはいすから立ち上がった。おかずも完食。ちょっと透けたヒラメの骨が、お皿の上でキラキラかがやいている。
「あさってまで、口きかないからね」
ぼくの鼻を指先でキュッと押して、食器をキッチンに持っていく。階段を上がる音も軽やかに、お姉ちゃんはぼくたちの前から消えていった。
「よかったわ。あのぐらいですんで」
おばあちゃんが、息をはいて肩を少し落とした。ほっとしたようだ。
学校から帰ってきたミコちゃんに、おばあちゃんはぼくとの出来事を話した。すると、「サトくんのうそにひっかかっちゃって。やーん」と、顔を赤くしてぼくの部屋に突撃したらしい。おばあちゃんはけっこう責任を感じて、しょげていた。
「おばあちゃん、ごめんなさい」
「はいはい。孫にまんまと一杯食わされちゃったわね」
手の平を上にむけて、外国の人みたいな恰好をする。
「サトル。ミコにもちゃんと謝ったの?」
お母さんが食後のデザート、アイスをみんなの前に置きながら、じっとり視線を刺してくる。
「うん。だけど許してもらえなくて、しばらくおしゃべりしないって」
「まあ、それもあさってまでのことなんだから、やさしい子じゃないか」
おじいちゃんが、スプーンにのったバニラを口に運んで、とりなすように目を細めた。
ホントそう。どうなることかと思ったけど、あさってになったらまたニコニコしたお姉ちゃんにもどってくれるんだよね。
あさってはとっても大切な日なんだし。どうかきげんを直してください。
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