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で、きょうがそのあさって。
やっときた。もう首を長くして待ちすぎて、キリンみたいになっちゃった。
きのうは少しでも早くあしたにならないかと思って、九時半にベッドに入った。
そしたら、カブトムシを採りにいくような時間に目が覚めた。でも、いまは冬。夏の王者は幼虫の姿で冬眠中。
ぼくも、もうひと眠りしよう。
目を閉じても、まったく落ち着かない。まっ赤になって怒ったミコちゃんの顔と、首をかしげてニッコリしたミコちゃんの顔が、かわりばんこにうかんできた。
きょうはどっちの顔なんだろう。
気になって気になって、じっとしていられなくて、ぼくは景気よく毛布をけりとばした。
いつもぼくがふとんから出るころには、ミコちゃんは学校にいってしまっていない。でもいまなら、まだ家にいるはずだ。
ミコちゃんが、本当にお話してくれるかどうか、たしかめるんだ。
キッチンから、カタコトと切れ間のない音がする。お母さんが朝ごはんやお弁当を用意する音だ。
「おはよう」
「あら、サトくん、どうしたの。ずいぶん早いのね」
体をゆらしてもなかなか起きないぼくが自分から起きたことに、お母さんが目を丸くしている。
「お、早いな」
お父さんもびっくり。
「サトくん、おっはよ」
明るい声にふりむくと、制服のスカートをひらひらさせて、ミコちゃんが早足でやってくる。よかった、ちゃんと口きいてくれた。
朝はいそがしいので、それ以上の声は聞けなかったけど、玄関の戸をあけるミコちゃんを見送ったとき、頭をなでられた。
笑ってるのに、目をぱっちりさせて見つめてくる。
「きょう、なんの日か知ってるよね?」
一回こっきりうなずくぼくに手をふって、ミコちゃんは風のようにとび出していった。
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