ミコちゃんのひみつ

9/10
前へ
/10ページ
次へ
 きょうはぼくの誕生日。ミコちゃんとぼくが出会った記念すべき日だ。  タオルでくるくるまきにされたぼくに、ミコちゃんが飛びついてきて「こんにちは、こんにちは」って何回もあいさつしてくれた。  覚えてるはずなんかないのに、まだ小さかったミコちゃんのニコニコの笑顔をぼくは知っている。  学校では帰ってからのことが気になって、身を入れて取り組んだのは給食だけだった。帰りの会が終わるとすぐに飛び出して、いま、ぼくは一人だ。部屋で待ってる。  なにをかって、そりゃあミコちゃんが帰ってくるのを。  きのうはちょっと目があうたびに、フンッて横をむかれたのに、今朝は笑顔で「おっはよ」だったもん。  やさしさももと通りで、あたたかい手の平が、いまも頭のてっぺんにあるみたいだ。  ぼけーっと宿題やって、時計を見たら四時。いつもなら晩ごはん前のおやつをたべている時間だけど、きょうはがまんだ。  漢字の書き取りも終わったので、フローリングにころがってマンガをめくる。時計を見ると四時十分。何ページか読んで、また時計。四時十三分。  待ち遠しいものがあるときって、全然時間が進まないよね。  て、思ってたら寝てたみたい。  ほっぺを小鳥につつかれる夢で目が覚めた。まぶたをうすく開けると、ニッと笑ったミコちゃんが指先をくるくる回してた。 「サトくん、誕生日おめでとう。はいプレゼント」  勢いよく両手で差し出されたのは、紺の包装紙に赤いリボンのかかった細長い箱。ちょうど計算ドリルぐらいの大きさだけど、ぺらんぺらんでなくて、しっかりと厚みがある。  これがドリルだとうんざりな厚さなのに、中身はとってもいいものだからにんまりしてしまう。  ミコちゃんは毎年、手作りのお菓子をプレゼントしてくれる。  ぼくが生まれてミコちゃんはお菓子を食べなくなって、お菓子を作るようになったんだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加