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きょうはぼくの誕生日。ミコちゃんとぼくが出会った記念すべき日だ。
タオルでくるくるまきにされたぼくに、ミコちゃんが飛びついてきて「こんにちは、こんにちは」って何回もあいさつしてくれた。
覚えてるはずなんかないのに、まだ小さかったミコちゃんのニコニコの笑顔をぼくは知っている。
学校では帰ってからのことが気になって、身を入れて取り組んだのは給食だけだった。帰りの会が終わるとすぐに飛び出して、いま、ぼくは一人だ。部屋で待ってる。
なにをかって、そりゃあミコちゃんが帰ってくるのを。
きのうはちょっと目があうたびに、フンッて横をむかれたのに、今朝は笑顔で「おっはよ」だったもん。
やさしさももと通りで、あたたかい手の平が、いまも頭のてっぺんにあるみたいだ。
ぼけーっと宿題やって、時計を見たら四時。いつもなら晩ごはん前のおやつをたべている時間だけど、きょうはがまんだ。
漢字の書き取りも終わったので、フローリングにころがってマンガをめくる。時計を見ると四時十分。何ページか読んで、また時計。四時十三分。
待ち遠しいものがあるときって、全然時間が進まないよね。
て、思ってたら寝てたみたい。
ほっぺを小鳥につつかれる夢で目が覚めた。まぶたをうすく開けると、ニッと笑ったミコちゃんが指先をくるくる回してた。
「サトくん、誕生日おめでとう。はいプレゼント」
勢いよく両手で差し出されたのは、紺の包装紙に赤いリボンのかかった細長い箱。ちょうど計算ドリルぐらいの大きさだけど、ぺらんぺらんでなくて、しっかりと厚みがある。
これがドリルだとうんざりな厚さなのに、中身はとってもいいものだからにんまりしてしまう。
ミコちゃんは毎年、手作りのお菓子をプレゼントしてくれる。
ぼくが生まれてミコちゃんはお菓子を食べなくなって、お菓子を作るようになったんだ。
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