あー 女神さまー

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 過激な女性大統領が誕生した。  就任早々、古くさい社会の仕組みをメッタ切り。  過去からの慣習にぶらさがっていた既得権の解体には、目を見張るものがあった。  公約通り、甘い汁をチュウチュウ吸っていたやつらが秒単位で切除されていく。 「聖域は認めない。私はどこにだってメスを入れる」  報道カメラをにらみつけ、敵対勢力にメンチ切ることエブリデー。  シメの言葉も容赦なし。 「余計なものを切り捨てたあとに、新たな世界が始まる」  賛否の嵐が吹き荒れて、世間の秩序も大混乱。  しかし、彼女はびくともしない。  カメラに向けられた二つのまなこから噴き出すもの。それは、決して曲がらぬ鉄の意志なのであった。  なぜこうもぶらさがりをズバズバと切り捨てていくのか。  それには、大統領の過去が深く関係していた。  若かりし頃、彼女は心と体がズレていることに悩み、あまりに悩み過ぎてハゲなど作り、ここまでストレスを感じるならばと、悩みの根源を除去する手術に踏み切った。  結果は見事成功。  心身ともに「彼」から「彼女」へと生まれ変わったのである。  新たな自分との出会いを祝し、また、古き自分との決別の儀式として、湖に切りとったものを投げ捨てた。 「えーい」  もとは男。わりと肩もよかったりして、見事な放物線の果てに、一物(イチモツ)はきらめく水面へとのみこまれた。 「さ、これからは、女の幸せを追求するわよー」  まだ消えぬ波紋に背を向けようとしたとき、女神さまが水面をわって現れた。 「おまえがいま、落したものはこの金の玉ですか? それとも鉄の玉ですか?」 「どっちもいらない」などと無下に断るには、あまりにもいい笑顔で問うてくる女神さま。  金のほうはもううんざりなので「鉄の玉」と告げた。  するとどうだろう。  受け取ったとたん、彼女の心に強い風が吹いたのだ。  私も変わったんだ。世の中も変えてやる。  どこでどう、そうつながるのかはわからない。  でも、女心アーンド秋の空。女の気持ちは移ろいやすく唐突なのである。   彼女は、ただひたすらに政治の道を突き進んだ。  辛いときもあった。苦しいときもあった。でもハゲるほどではない。  あのときの悩みに比べればこんなもの。  どんな難局も鋼のメンタルで乗り切って、やがては「鉄の女」と呼ばれるほどに大成したのであった。  そして生じる大混乱。今日も嵐が吹き荒れる。  自分のおせっかいが、大騒ぎを引き起こしていることを、女神さまは知らない。
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