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シゲさんが作業を始めて5分も経たないうちに、俺達3人の前に試作品のラーメンが出された。
もうそこらのラーメン屋なんか目じゃないくらい旨くて……
「どうやろ」
シゲさんが熱意を感じさせる目で俺に訊いてきて、俺は「すっごいうまいです!!」って、まずは一番の気持ちを伝えた。
でもシゲさんはもっと具体的な何かを求める目で「こうしたらええ、とか……なんかある?」って訊いてきて。
俺はじっくり考えて、
「細麺が好きなんでストライクでしたし、チャーシューも完璧でした。
それでも敢えて言うなら、ここにメンマとかモヤシなんかのシャキシャキ系があったらもう言うことなしって感じです」
食べ終わったスープを見つめながら言った。
シゲさんは微笑みながら「なるほど…」と頷いて、何かを考えてる。
「保と薫は?どうやった?」
シゲさんに話を振られた先生と薫さんは「旨かった」「ちょー旨かった」って返して、ニコニコしながら水を飲んでる。
「そんだけ?役に立たへんなぁ~ 意見あってこその試食やんかぁ」
「だって旨い、意外にねーもん」
「そーそー!もう全っ然店に出せるって!」
オーバーアクションで答える薫さんに、シゲさんはふっと柔らかい笑いを漏らして「まぁ、もう出すことは決めてるんやけどねぇ」って言いながら、手を伸ばして食べ終わった俺たちの器を下げた。
食べてる最中に聞いた話では、このお店はどうやらカフェバーらしい。どう見ても「カフェ」って感じじゃないけど、店の正面の壁にもCafe & Barって書いてあるんだって。
日曜のランチタイムに出すカレーはラーメン以上に絶品って薫さんから聞いて、俺は今ラーメン食ったばっかなのに絶対食いに来たいって思った。
「あ……そうだ。思い出して良かった!保に見てもらいたいもんあるねやんかぁ、ちょい上来てくれる?」
前掛けで手を拭きながら厨房から出てきたシゲさんが、階段の上を指差して言った。頷いた先生と茂さんが階段を上がって行ってしまうと、当然ここは俺と薫さんだけになるわけで……
「しっお~うクン!!」
薫さんは突然先生の席に移動してくると、椅子を掴んでガガッと俺の方へ近寄ってカウンターテーブルに頬杖をついてちょっとニヤニヤした感じに俺を見た。
「ねーねー 士央クン、ちょー可愛いよね!よく言われるでしょ?」
なんて……薫さんはまるで下手なナンパみたいなことを言って俺の目をじっと覗き込んだ。
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