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薫さんが、先生を好き……
事実はシンプルだと思うけど、どう考えていいか分からずにフリーズする。いや、考える必要はないのか……?良く分からない……
「あれ……思ったより反応無いね。つまんねーの」
そう言いながら薫さんは、何かに気付いたように目をぐるりと天井にやった。二階で物音がして、話し声が階段の空間に響く。上に上がった2人が降りてくるみたいだ。
「なぁ、お前がホントにライバルじゃないか、今から確かめてやるよ」
挑戦的に笑いながらそう言って携帯灰皿の口をぱくっと開けた薫さんが、吸殻をそこへ放り込んで階段の入り口にゆっくりと移動した。
それからスイングドアの前に立って、薫さんはまるで待ち伏せしてるみたいで……
ちょうど先に降りてきた先生が、一段低くなった土間に脱いだ靴に足を突っ込んで、つま先立ちになりながらこちらへ出て来た時だった。
薫さんはタイミングを計ってたみたいに先生に近づいて、先生が「ん?」って薫さんを見上げた瞬間、顎を掴んでキスをした。
ばっちり……目に入った。軽く触れあったとかじゃない、しっかり重なり合った唇。
「か…おるっ!」
先生はどん、と薫さんの胸を押して離れた。
「こーゆーのしないって言ったじゃん!」
「なんだよ~怒るなよ。キスくらいで。俺とお前の仲だろ~?」
全然へこたれた様子もない薫さんが笑いながら先生の背中をばん、と叩く。
そしたら今度はシゲさんが薫さんの後ろ頭をぱん、と叩いて「薫……なんしてんの」って、穏やかながら目が笑ってない顔をした。
「ん~?俺と保の愛をカクニンしてたの」
「そういうおふざけは、してええとこと、あかんとこと見極めなあかんやんか。今、ええとこ?」
「いいと思ったからしたんじゃん。何?こいつがいる所でってこと?高校生は大人だろ、なあ?」
薫さんはなんかやけにいきいきして俺に同意を求めてきて……なんか、怒られるのが嬉しいみたいに見える。
シゲさんはしょうがないなあって風にため息をついて、「ごめんやで、士央くん」と言いながら薫さんの耳たぶをぐっと下にひっぱった。
「いててててっいてぇ!いてぇってば!!」
「すーぐこうやって悪さすんねやんか。ほら、ごめんなさいは?」
「ゴメン、ゴメン!ごめんなさーい!」
謝りながら、薫さんはやっぱり嬉しそうで、シゲさんはそんな薫さんを見て呆れたように眉を上げて、小さく笑った。
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