「寄る」

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「寄る」

Side:尚也 「尚くん!しーちゃん来れるって!あとね、おーちゃんも来るよ!」 ええ、改めて言って頂かなくても顔を見れば分かります。瑞希は店の外から戻って来て満足げに席についた。 「おーちゃんって、しーちゃんの元家庭教師の?」 「うん!」 一回も会ったことないのに、瑞希から時々話を聞かされてるからもう知り合いみたいな感覚になっちゃってて。 しーちゃんなんか誕生日や家族構成まで知ってっからね。 「うふふ、あの二人一緒に出掛けてたんだぁ~いい傾向!なんか電話の声がちょっと元気なかったのが気になるけど」 「なに、いい傾向って」 「え~?えへへ……えっと~……知りたい?」 「いえ別に」 「えー!聞いてよ、そこは!」 朝会った時から終始テンションの高い瑞希は、それはそれは楽しそうで見てるこっちも思わず笑っちゃう。 「あんね、しーちゃん、おーちゃんのことがすっごい好きなの。尊敬して、憧れててさ。 おーちゃんといるとなんかちょーいい雰囲気なの!だからさぁ……つきあっちゃったりしないかなって、ね?俺の野望!」 瑞希のヤツ、拳握り締めてさ。 「なんでそれがお前の野望なの。なんかちょいマヒしちゃってるみたいだけど、男に恋愛感情抱く男はごく少数だからね?」 ゲイの俺が、たまたま俺を好きになっちゃった的なコイツに言うのもおかしな話だけど。 「うん……でもね?前ちょっとおーちゃんと話したことあるの。 しーちゃんのこと、年齢のことがなければイケたかも、みたいなこと言ってたから、少なくともおーちゃんは男の人も大丈夫なはず!」 「それ憶測でしょ。いい加減な情報だなぁ…」 「や、や、はず、じゃなくて絶対そう!俺のカン!」 「カンで絶対とかおかしいでしょ」 ほんとだってぇ~とかなんとか笑ってる瑞希……まぁ実は結構お前のカンは当たるって知ってるんだけどね。 瑞希と市内では有名なでかい神社に初詣に行った帰り、「ねぇねぇ、前に話したでしょ、JJ。ちょっと寄ってかない?」て言われてさ。 寄ってく、っていうから近いのかと思うじゃない。 電車2回乗り換えたからね。もはや「寄る」の域を越えてるよね。 まあ普段会えない可愛い恋人とのお願いとあらばね、そりゃお付き合いしますけど。
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