「寄る」

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それにしても……しーちゃんは割と感情が顔に出るタイプなのね。瑞希は「カワイイんだよ」とか「頭いいんだよ」とかしか言わないから知らなかったけど。 もう目が『男だ……間違いなく、男だ……』って言ってる。瑞希から男と付き合ってるって聞いてたものの、目の前にした現実感の威力パネェって感じなんでしょ。 それがあまりにそのクリクリの目に出ちゃってるから、瑞希も『おーちゃん』も苦笑ぎみ。 「ども。越智です」 眠そうな男『おーちゃん』こと越智さんは、ちょうど俺の向かいの席に腰を下ろしながらにこっと笑うと、「あんたが……ナオクン?」って、じいっと俺を見た。 俺はそれを聞いて、ええ、支倉ですって言おうとしたんだけど、「えっ!」っていうしーちゃんの予想外に大きい声に遮られちゃって。 「先生、知って……あ、瑞希……?」 びっくりした目で越智さんを一瞬見て、その後瑞希にどういうこと?って目で訴えてる。 そしたら「あーそっかぁ、しーちゃんに言ってなかったね」って瑞希がほんのわずか、隠した動揺を滲ませながら言ってさ。 「ほら、おーちゃんにJJで会ったって前言ったでしょ?あん時いろいろおしゃべりしてて、ついぽろっと言っちゃんたんだよね、尚くんとのこと。 おーちゃんには、しーちゃんも知ってるよって言ったんだけど……この事しーちゃんに言うの、うっかり忘れてた。」 えへっと笑いながら、ちらりと越智さんを見て話はここまで、とばかりに一瞬強い目線を送る瑞希。 「へぇ……うっかりね……」 俺が含みを持たせてるのに気づいていながら、瑞希は知らん顔してさ。 ははぁ……ぴんと来ちゃった。 1か月くらい前、平日の夜に瑞希が珍しく会いたいって言ったことがあったけど…あん時ココで越智さんに会ってたわけだ。シフォンケーキのお土産もそれなら納得がいくし。 で、目配せが必要なくらいは、秘密があるのね。二人に。 へぇ~…… 「あ、ああ、それでか……びっくりした。でも良かった。お前が尚…さん…のことを先生になんて紹介するのか聞いてなかったし……どうしようかと思ってたとこ」 しーちゃんが笑って脱いだコートを椅子の背に掛け、全員が席につくと4人掛けのカフェテーブルはぎっしりって感じになる。 しかも前の2人の間には微かに緊張感があって……うーん、聞いてたようなほのぼのムードじゃなくない?
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