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「明けましておめでとう。決まってる?『今日のおすすめ』は8日までの正月限定バージョン。ミニチーズタルトとロイヤルミルクティだよ」
オーナーさんが越智さんとしーちゃんの前におしぼりと水のグラスを置きながら、限定バージョンの写真つきメニューを前の二人に見せた。
「あ、じゃあ俺はおすすめお願いします」
しーちゃんがおしぼりで手を拭きながら、微笑んで言った。
そしたらオーナーさんがちょっと驚いたように眉を上げてメニューを見直して、「写真……うまく撮れてないかな……」って呟いた。
しーちゃんがえ?と目を上げると、オーナーさんが、
「だって、士央くんチーズ系のかなり好きでしょ?毎回『うわ、うまそぉ!』って感じに食い付いてくれるからさ。写真が悪かったかなって思って」
って笑いを含んだ声で言う。
「いえ、写真いいですよ!うまそうです!」
困ったように笑ったしーちゃんを越智さんが結構な真顔で眺めてて……うーん。なんなんでしょうね、この空気。
瑞希が、電話の声が元気なかったのが気になるって言ってたけど……喧嘩とか?いや、そういうぴりぴりした感じでもないなぁ。
「少し前にラーメンを食べてきたので、それでいつもよりお腹が空いてないせいかもしれません」
「ううん、こっちこそごめんね。強制してるみたいだね。でも正直あの反応すごく嬉しいんだよね。作ってる側としては。良かったらまた聞かせてね。で、保は?おすすめ?」
「おー」
のんびりとした越智さんの返事を伝票に書き留めて、オーナーさんは新しく入って来たお客の応対をしながらカウンターの中に入った。
大きな紙袋をいくつも持った客や着物姿の女性をつれたカップルなんかが、いかにも正月、な感じの店内。
煩くはないけど、埋まった席の8割を占める女性たちがみんなお喋りしてるから、まぁそこそこざわついてた。
いつもはもっと静かなの、と苦笑いしてた瑞希は、今は目の前の2人のことがどうにも気になるみたいで、どこに行ってたの、なんて当たり障りのない会話をしながら様子を探ってる。
「へぇ、菅原神社。知らないなぁ」
「そりゃ俺もネットで調べたもん。でもやっぱネット情報はあてになんねえ。すっげぇ人だったもん!ありゃ穴場とは言わねえよ」
「絵馬は?書いた?」
「書いた書いた!必勝!をでかく書き過ぎてさぁ──」
んーなんか新鮮。同級生とお喋りに花を咲かせる生瑞希。
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