上手く言えない

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「で?何があったの?もう順番とか気にしなくていいから、思いついたまんま言って」 俺の性格をよく分かってる瑞希はそう言って、俺が喋り出すのを静かに待ってくれてた。 思い付いたまんま…… 俺は皿に残った二つのミニタルトを見つめて自分の内側を探る。 「苦しい」 「うん。何が苦しいの?」 「先生と……いるのが」 「おーちゃんといるのが苦しいの?なんで?」 なんで……なんでって…… 「俺、先生が……」 相槌を打ちながら次の言葉を待ってる瑞希に、けど決定的な一言が口に出来ないで口ごもった。 だって音として生み出せば、もう逃げられない。 いや自分では分かってんだけど。もう腹の中にはその気持ちがあるんだから。 けど、先生はもちろん俺自身にすら歓迎されてないこの気持ちを口に出すことの意味を考えるとどうしてももう一歩が前に出ない。 そしたら瑞希はまっすぐ俺を見て、 「好きなんでしょ。そこは分かってるよ」 と……さらっと言った。 「えっ……お前……いや……あの……」 「うん、前と違う意味で好きなんでしょ?分かってる。俺が尚くん好きなのとおんなじなんでしょ。でも苦しいのはそれのせいじゃないよね?だから、何があったのか話してみて?」 何も言わなくても、全部伝わってる……瑞希が時々見せる、驚くほど聡明な一面。 「今日、初詣に行ったんでしょ?そこで何かあったの?」 頭も気持ちもまるきりついてってないけど、瑞希に引き出されるまま、俺は今日を振り返りながら話し始めた。 初詣で先生の友達、薫さんに会ったこと。彼がゲイで、その人の恋人のシゲさんの店でラーメンを食ったこと…… チャーシューが美味かったとか麺の硬さが最高に好みだったとか……全然関係ないことまで本当に思いつくままに喋った。 それを、瑞希は口を挟まずに黙って頷いて訊いてくれて……そうするうちに自然と、自分の話が核心に近づいて行く。 「それで……その薫さんがさ、ふざけて先生にキスしたんだ……俺、前に男友達がふざけてキスしてんの見て気持ち悪かったのに、先生のは気持ち悪くないのがなんでだ、なんでだって思ってて……先生もなんか平気そうで……そしたら男の人もいけるって……バイって言うんだって…」 俺は肩で息継ぎをした。 あの時が、リアルに甦る……
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