託されて

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託されて

Side:O ったく、いい性格してるわ、あいつ。 俺は椅子にもたれ掛かって腕組みをしたまま、会計を済ませて出てく二人を見送った。 席を離れるとき、瑞希のやつ意味ありげに士央を見つめて拳にぎゅって力入れてさ。頑張って!みたいなさ。 そんなん見たら、士央が俺に言いたいことがあるんだっての、カクジツじゃん…… はぁ~……やっぱ俺が何かしたんか……?マジわっかんねぇ…… 4人掛けの片側に並んで座った俺と士央は、しばらく黙ってそのままでいた。 いや、俺だって考えたよ。向かいに移動しようかなって。 けどさ、なんかそうやって席替わったら『さあ。なんか言いてぇことあんだろ。言えよ』みたいな空気になんじゃん。 俺、相手が黙ってんのを無理に言わしたりとか……好きじゃねえの。自分がされたくねえもん、そういうこと。 だから、士央が言いてぇんなら聞くけど、わざわざ言うように仕向けんのは嫌なんだよなぁ。 そんなことを考えてたら、司がやって来たの。瑞希と支倉のトレーを片付けになんだろうけど、目を見りゃこっちの様子を伺ってんのが分かる。 「保、コーヒーのお替りいる?」 トレーを持ち上げながら司が訊いてきたけど、瞬間、タルトを二つ食い残してる士央の皿に視線が動いた。 「んーいいや。お水ちょうだい」 「了解。……士央くんは?紅茶かコーヒーか……新しいのいる?」 司がタルトのことに触れないのは、まぁ、状況を読んでの事なんだろうな。 「いえ……もうお腹いっぱいで……」 「ん。じゃあお水だけね。席、どうする?良かったら士央くん、こっちに来る?」 司が瑞希が座ってた椅子を引いて促すと、士央は「えっ」としばらく絶句してからゆっくり立ち上がり、俺の斜め向かいに座り直した。 司が行ってしまうと、士央はこっちからは表情が見えないくらい俯く。 白いシャツに杢グレーのケーブルニット。少し長めの黒髪の、健康的な光の輪。 相手が黙って俯いてると、なんか妙に見ちまうよな。まじまじと。 すぐに戻ってきた司が俺のグラスに水を注ぎ、テーブルのあいた場所を台拭きで拭いて、士央のトレーを移動させる。 俯いたままぺこりと頭を下げた士央を見て、司がお前どうするつもり?って感じの目線を寄越してさ…… なんだよ、どいつもこいつも!俺にどうしろってんだよ……
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