告 白

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 オレがハニーちゃんに魂を捧げるようになったのには、正当な理由がある。  自慢じゃないが、女の子と口をきいたことがない。小学二、三年のころならあったかも知れない。でも、オレの記憶の古文書は霞がかかって読めやしない。よく覚えていないんだ。  第一、そんなにいいことがあったなら、未来永劫忘れるわけがないから、きっとなかったのだろう。  中学生になるとオレの個性は確立された。  ボディはマシュマロ。顔は豆大福。頬に噴き出すニキビたちは、本当に豆そっくりだった。同じ学生服のはずなのに、オレが着るだけで途端にもっさくなるのはなぜだろう。  インドアに徹しているのにやたらと汗をかくし、鼻毛は伸びるのがはやい。ふいてもふいてもメガネのレンズが透き通らないのは、常に皮膚から脂が蒸発しているからとしか思えない。  賢明な選択を常に志すオレは、二次元に命を燃やした。  炎は激しく額をなめ、近ごろでは野焼きを行った草原のごとし。シャンプーのたびに排水溝に吸いこまれていく髪たちをながめていると、灯りをともした小舟が川を下る精霊流しの映像が脳裏をよぎる。三十代の青年だとはだれも思ってくれない。  ならばシブさを出そうと無精ひげを伸ばしてみたところ、鏡に映ったのは鎧をまとえば完璧な落ち武者コスプレのおっさん。  見た目はコスプレでとどまっているが、中身はリアルで敗走中。  地位もなければ名誉もない。もちろん貯金もない。親の援助もない。ないない尽くしに一層の花を添えるために、言わずもがなのことを言わせてもらおう。  オレは、女にモテない。
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