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プロローグ
「ママ……?今日はどこへ行くの?」
「ちょっとね。すぐ帰ってくるから。」
私が4歳の頃、シングルマザーだった母はそう言って、毎日夜遅くに帰ってきた。
「なんで毎日出て行っちゃうの?」
「あなたのお父さんを探しているのよ。」
「どうして?わたし、お母さんがいれば大丈夫だよ?」
「……………そう言うわけには、いかないの……。」
そう、虚しそうに母が答えた翌日、私は母が何をしているのかを見た。
いつものように母が出ていくと、私は畳に座り込み、母がどのようなことをしているのかを見たいと願った。
すると、頭の中にイメージが浮かんだのだ。
鮮明ではないが、性別や髪型などはわかった。
見えてきたのは、若い茶髪の男が、母を押し倒してキスをする姿だった。
横に見える棚には、1つの結婚指輪が置かれていて、男がキスをするたびにガタガタと揺れていた。
2年後、母は死んだ。
私に心配をかけないように、自分が不治の病だと言うことを隠していたそうだ。
そして、私は本当に1人になってしまったのだ。
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