プロローグ

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

プロローグ

「ママ……?今日はどこへ行くの?」 「ちょっとね。すぐ帰ってくるから。」 私が4歳の頃、シングルマザーだった母はそう言って、毎日夜遅くに帰ってきた。 「なんで毎日出て行っちゃうの?」 「あなたのお父さんを探しているのよ。」 「どうして?わたし、お母さんがいれば大丈夫だよ?」 「……………そう言うわけには、いかないの……。」 そう、虚しそうに母が答えた翌日、私は母が何をしているのかを見た。 いつものように母が出ていくと、私は畳に座り込み、母がどのようなことをしているのかを見たいと願った。 すると、頭の中にイメージが浮かんだのだ。 鮮明ではないが、性別や髪型などはわかった。 見えてきたのは、若い茶髪の男が、母を押し倒してキスをする姿だった。 横に見える棚には、1つの結婚指輪が置かれていて、男がキスをするたびにガタガタと揺れていた。 2年後、母は死んだ。 私に心配をかけないように、自分が不治の病だと言うことを隠していたそうだ。 そして、私は本当に1人になってしまったのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!