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「それは……」
指輪を買って貰ったら、外したくない。
でも、それで器に傷を付けたりしたら、困る。
だって、ちぃちゃんは、器を仕事にしている人の奥さんになるんだから。
だから、指輪は買って貰わない。
ちぃちゃんがざっくり話してくれたのは、そういう事だった。
「素敵……!めちゃめちゃ、甘い……!!」
「そう?」
ちぃちゃんは、ありがと、って言って、指に何も付けてない手を洗った。
「結局、次の日は、指輪を買わないなら代わりにって、今日とおんなじ事したなあ」
「え?」
「すき焼き。……それまで迷惑掛けた人達に結婚する事になったって報告がてら、お家ですき焼き。」
「ぷっ」
私は春菊を皿に盛りながら、吹き出した。
「……らしい!!ちぃちゃん家らしい!!」
なんだろう……その、素敵さとなんでそうなるが絶妙に混じり合った感じ。
かっこよすぎなくて、すごく好き。
「私、将来は絶対ちぃちゃん家みたいになりたい!」
「そう?ありがと?……でも」
──でも、まなも、家の子だからね。
ちぃちゃんは白菜を軸と葉っぱに分けながら、私に向かってにっこり笑った。【終】
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