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最終戦
じいちゃん、そっちの世界はどうですか?
俺は元気です。今、隣にはいませんが、美琴も、父さんも元気です。
誉がうちの隣に越して来て、今日で六日になりました。
父さんはもちろん、じいちゃんにも全然似てないな、というのが、誉の第一印象です。富士子ちゃんにも似てないし、やっぱり、ばあちゃんに似ているのかな?
諸事情により、俺は誉と二日間を共に過ごすことになりました。本当は三日間でしたが、これまた諸事情により、短縮となったのです。説明は省きますが、じいちゃんは今、神さまたちの近くにいるので、伝わると思います。神さま……閻魔さまも、仲間でしょうか?
話が飛んでしまいました。俺の悪い癖です。父さんも、美琴も、恐らくは誉も同様に、この「悪癖」というものを持っています。悪いことに、家族だけでいる時には、どれだけ話が飛ぼうと、主語を省こうと、なんとなく通じてしまうのです。
じいちゃんも、恐らくは同じだったのではないでしょうか。
もっと、たくさん話をすればよかったと後悔しています。
生きている間に味わう後悔は、少ない方がいいに決まっています。俺が学校でやらかした日に、そんなことを口にしたら、美琴に鼻で笑われました。
「後悔を恐れてなにも行動を起こさないなんて、愚の骨頂よ」
……俺の「やらかし」など、美琴には大した内容ではないのでしょう。そもそも、美琴は学校でヘマをすることはないようです。一番を取ることに命を燃やしていて、勉強も、運動も、よくできます。それでも、クラスでは浮いているのだから、俺と大差ない存在であるのは間違いないです。絶対、口にはできませんが。
じいちゃんは、後悔していたことがありますか?
今、こうして問うことを許してください。
面と向かって聞いていたら、雷を落とされていたでしょうね。
怯えることなく、ぶつかって聞く勇気があれば、よかった。
まさに、後悔です。
残された人間が、この世を去った人が後悔していたかどうかを考えることなど無意味です。だって、正解がわからないから。
俺に言えることは、ただ一つ。
じいちゃんの息子は――息子たち、は――大丈夫です。
具体的な理由もつけずにそんなことを言うのは無責任かもしれません。でも、大丈夫。俺はあなたの孫で、あなたの息子の息子だから……って、よく、わかんなくなってきた。
父さんは俺のヒーローです。仕事に一所懸命でカッコいいし、俺と美琴のことも全力で愛してくれてる。不器用なのが惜しいけど、これはもう遺伝なのだと、俺も諦めています。
不器用だけど……ちゃんと想いを伝えることができる父さんは、カッコいい。母さんも、父さんのそういうところが好きだったんじゃないかな。聞いてみたかった。これは後悔じゃなくて、ただの空想です。
誉は……不器用には、見えない。
そこがまた憎たらしい。あ、じいちゃんの息子なのに、ごめんなさい。
俺、一つ、気がついたんです。
父さんが、突然、誉に嫌われた時期。
十歳頃、って言ってたけど、それが本当なら……。
じいちゃん、あなたの息子は、あなたに、そっくりです。
不器用で、愛情表現がド下手くそで、頑固一徹で――……。
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