五人姉妹の夏休み(短編)

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八月。 どこも夏休みの今、とある大崎家の五人姉妹は休日を満喫中。 父と母、そして七海(ななみ)琴子(ことこ)桜子(さくらこ)若菜(わかな)花林(かりん)の七人家族で暮らしている。 現在、父と母は娘達をおいて二人で、ハワイに旅行に行っていた。 ただいまの時刻は午前九時を回っていて、そろそろ姉妹達が起きる時間。 軽快な音を立てながら階段を降りてくる。 ドアノブをひねる音と共にリビングへ入ってきたのは、姉妹の中でも一番のしっかり者である大崎桜子。 彼女は姉妹の中でも一番背が高く、腰まで延びた黒髪が特徴。 家事全般をこなす一番の姉的存在であるため、家族全員から頼りにされている。 落ち着いた性格をした彼女は、大学一年生にして人気者。 既に数人の男子たちから告白されているほどだが、全て断り続けている。 着替えは既に自室で済ませており、お気に入りの花柄のワンピースを身にまとっている。 「あれ?」 桜子は疑問に思った。 エアコンはいつも夜には切っているのだがついている。 どうやら今日は、珍しく先に起きている人がいるようだ。 その人物は巨体をソファーに預けるように横になっている。 「琴子姉さん、起きてたの?」 大崎琴子。 大崎姉妹の二女で、桜子の一つ上の二十歳。 運動音痴で動くことが面倒くさいと、いつもごろごろしているが、学校にはちゃんと行く案外いい子な姉。 今はポテチを片手に寛いでいる。 「朝からお菓子なんて太るよ」 「もともと太ってるから関係ないよ~」 桜子の忠告を軽く受け流しながら、食べる手を休めない。 いつもだらけた生活を送っているために、体重九十八キロのおデブへと育ってしまった。 その体型のせいで、洋服選び苦労している彼女は、家では決まってジャージ姿で過ごしているのだ。 痩せないかなこのデブ。 そんなことを思いつつも家事に取り掛かるため、台所に向かう。
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