SIDE:A

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 悪夢を断ち切るように、飛び起きた。額には汗が滲んでいる。僕はぶるりと身を震わせた。  季節は着実に歩みを進め、朝晩はかなり冷え込むようになった。まだ夜中といえる時間では、冷え込み真っ只中という感じだろう。  汗を拭うため、僕はゆっくりとベッドを抜け出す。  衣類ケースの中からタオルを取り出し、顔を覆う。ふぅと一息ついた。  このまま二度寝してもよかった。時間も時間だし、何より今日は土曜日だ。特に予定も入れてないので、今日明日は会社も休み。  しかし僕は不意に、いても立ってもいられなくなった。夢のことを思い出したのだ。 「そうだ、あそこだ」  何度も見る夢。これまでは、一緒にいるのが誰なのか、そればかりを気にしていた。しかし、突然思い出したのだ。 「母さんの実家だ」  今まで気にしたことはなかった、夢の場所。それを突き止めた僕は、じっとしていることなどできなかった。 「車で行けば、何とかなる」  僕は意を決し、速攻で出かける準備をした。
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