白と黒

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白と黒

 羽毛に覆われた白い獣が帝都郊外の東部上空を駆ける。その背に乗っているのは、白の王だ。  中央突破部隊の救護に回っているはずの彼女が、何故こんな場所にいるのか。それは、四大国の王たちの戦闘が始まる前、ちょうど白の王が黄の王の傷を治癒した直後にまで遡る。  黄の王を見送り、救護部隊の指揮に戻った白の王の元へ、金の王が血相を変えて走ってきたのだ。  何事かと驚く白の王に、金の王は今にも泣き出しそうな顔をして叫んだ。 「今すぐグランデル王の元へ向かってください!」  その言葉を聞くや否や、白の王は迷いなく騎獣に跳び乗り空へと走り出した。そのため彼女は、自分が赤の王の元へ行かねばならない理由を正確には知らない。  ただ、赤の王の元へと向かう背中に投げかけられた、未来視が、という金の王の叫びから、この先に待っているだろう事態を察することは容易だった。  未来を視た金の王が、赤の王の元へ向かうよう白の王に要請する。それにどういう意味があり、どれほど重いことなのかを、彼女はよく理解している。  そして先程、白の王は自身が向かう先の空が大きく割れるのを確認した。あれが味方によるものなのか敵によるものなのかは判別できなかったが、どちらにせよあの規模の戦闘が起こっているというならば、先を急いだ方が良い。  可能な限り騎獣を飛ばし、戦地だろう場所へなんとか辿り着いた白の王は、その惨状を見て絶句した。  元の状態が判らないほどに大地はめちゃくちゃで、繁茂していただろう植生は、その面影すらない。  およそ街ひとつ分の範囲が等しくそんな有り様で、その範囲から外れた場所では大した被害が見られないことがまた、戦地の中心で激しい戦闘が繰り広げられたことを物語っている。
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