白と黒

2/7
前へ
/321ページ
次へ
 高く隆起したり深く抉られたりと、最早歩くことすら困難なほどに荒らされた大地を見下ろし、白の王は懸命に求めている姿を探した。  と、そんな彼女の元へ、緑の獣が走ってやってくる。白の王がそれに気づいて視線をやれば、獣はすぐさま反転して何処かへ走り出した。  あれは緑の王の騎獣で、自分を案内しようとしているのだ、と察した白の王が、すぐさま獣に追従する。  そうして連れて行かれたのは、荒れ果てた戦地のちょうど中心にあたる場所だった。  一層激しく荒れた大地が広がるなか、まず白の王の目に入ったのは、大柄な地属性の騎獣と、その傍らに転がる橙の王だった。思わずそちらへ向かいそうになった白の王は、しかしはっと思い直してその場に踏みとどまる。  ぱっと見で橙の王に外傷がないこと。傍らで彼を守るように立つ騎獣に、あまり焦った様子がないこと。そして何より、緑の騎獣がそちらに向かおうとはしなかったことが、白の王の行動に待ったをかけた。 (……ならば、グランデル王は……!?)  金の王の言葉を思い返した白の王が、視線を巡らせる。そして、ようやく見つけたその姿に、彼女は大きく目を見開いた。  雷の毛並みの獣、ライデンが、ぐちゃぐちゃになった大地に伏せている。そして、まるでそれに守られるようにして、彼はいた。 「っ!」  声なき声を漏らした白の王が、騎獣を走らせてそこへ向かう。半ば飛び降りるようにして地面に足をつけた彼女は、白い衣の裾を揺らして、ライデンのいる場所へと駆け寄った。 「……グランデル、王」  呼び掛けに、しかし赤の王は応えない。代わりに、ライデンが縋るようなか細い鳴き声を上げた。 (……ああ、なんてこと……)  間近にまで歩み寄った白の王が、その場に膝をつく。その目が見つめるのは、ライデンが身を寄せているそれだ。  四肢が消し飛び、それどころかその腹も半分が抉り取られ、それでもか細く呼吸をしている、赤の王である。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

296人が本棚に入れています
本棚に追加