白と黒

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(…………私は、)  どうすべきなのか、という問いを、白の王が自身へと投げ掛ける。  赤の王の心臓は、もう間もなくしてその動きを止めるだろう。今こうして生きていること自体が、奇跡のようなものなのだ。 (……傷の位置や状態から察するに、命に直結する心臓と頭だけはなんとか守り抜いたのでしょう。けれど、その他の場所を庇う余裕はなかった……)  つまり、赤の王に死ぬ気はなかった。きっと、だからこそこんな状態でもまだ呼吸を続けている。続けようと抗っている。生き物の生存にとって、生きる意志というものがどれだけ大切か。白の王は、それをよく理解している。  赤の王を見つめる白の王が、両の手を握り締めた。  彼女がここに居るのは、金の王に促されたからだ。未来を視ることができる彼が、赤の王を救うべく進言したのだ。では、それは誰の意思なのか。  白の王が、握る拳に一層の力を込めた。  銀の王が言っていた。公式に記録が残されていないだけで、過去視も未来視も神性魔法の一種なのだろうと。  ならば、金の王に未来を視せたのは神だ。それを視た金の王が白の王に助けを乞うことを見越して。天秤が傾く危険を犯してまで。神が、赤の王を救うべく動いたのだ。  そして彼女は知る。己がこの場所に呼ばれた、その意味を。  果たして、そこに神の意思が在るのならば、罰せられるべき罪をも赦されるのだろうか。  その答えを、白の王は知らない。だが、目を閉じた彼女は胸の内で呟く。それが神の願いならば、自分こそがその罪を背負うべきなのだろう、と。
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