悲しい蝶

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「……うん、青と緑はまあ、予想通りかな。赤の王様、ああ、今は元王様か。まあいいや。彼の覚醒があんなに早いと思わなくて赤に全振りしちゃった分、どうしても他は限界があったし。で、その赤と橙は……、ああ! 酷い! 折角僕が頑張って創ったタマちゃんが!」  ガラス玉を見て叫んだウロが、心底残念そうな声で唸る。 「うう……、思った以上にあの微特殊個体、粘り強かったんだなぁ。と言うより、これは橙の功績かぁ。あんまり警戒してなかったけど、やっぱりリアンジュナイルの王様は総じて厄介だな。あわよくば信仰に溺れて潰れてくれるかと思ってたのに……」  そこはつまらない結果に終わっちゃったなぁ、と溜息をついたウロが、つるりとガラス玉を撫でる。 「格下を抑え込めなかったって考えると残念な結果だけど、最終的にエアルスが出てきたんじゃ、タマちゃんに勝ち目はないや。複数属性付与するほどの天秤の余裕もなかったし、頑張った方かな。で、その後は……、うんうん、まあ死ななかったらそうなるよね。いやぁ、総力戦だなぁ。わくわくしちゃうね」  そう言ってウロは皇帝を振り返ったが、皇帝は眉間の皺を深めただけで、彼に同意することはなかった。そんな皇帝に肩を竦めてから、ウロが床に伏したままの少年を見下ろす。
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