戮力一心

1/22
前へ
/321ページ
次へ

戮力一心

「それでは、これより緊急円卓会議を開催する」  銀の王の厳かな声を合図に、神の塔の円卓に集った王たちが無言で頷く。  赤の王が倒れた翌日の早朝、円卓の王たちは銀の王の要求により、ここ神の塔に集められた。王は皆、門を通じてここに集結したため、定例会議のときのような供回りはいない。これまでの臨時会議の例に漏れず、ここにいるのは王だけだ。  ひとつだけ目立つ空席、赤の王の席をちらりと見た銀の王は、すぐにその視線を上げた。 「まずは私からの報告だ。既に全ての国に連絡がいっておるとは思うが、敵、――ウロは、神に連なる上位種である。奴は、神の塔を手に入れることで神に至るという皇帝の願いを叶えるという名目で、ロイツェンシュテッド帝国に手を貸している。……だが、ウロの目的は恐らく帝国のそれと同じではない。あれにとっては、人の子などただの駒にすぎぬはずだ。よって、此度の戦争において我々が最も注視すべきは、帝国ではなくウロ個人の行動であると私は考える」  銀の王の言葉に異を唱える者はいない。銀の王に言われるまでもなく、皆、最優先で排除すべき対象はウロであると認識しているのだ。 「帝国領に侵攻した部隊が行うべきことは、大きく分けて三つ。帝国兵の排除と、エインストラの奪還、そして、ウロを倒すことだ。……私はそう考えるが、異論は?」  そう問いかけた銀の王に、黄の王が手を挙げた。 「異論はないんすけど、確認したいことが。……まあ、エルキディタータリエンデ王もアレと直接接触したそうなんで判ってるとは思うんですけど、…………誰が、あれを倒すんですか?」  黄の王の言葉に、銀の王が隻眼を細める。 「いくらエルキディタータリエンデ王が老いたっつっても、あんたはそこらの騎士や兵士よりはよっぽど強いでしょう。そのあんたが、一矢報いることすらできずに目玉抉られたんだ。……ああ、いや、そうじゃねーな。もっと絶望的だよな」  そう言った黄の王が、赤の王の席を見る。 「間違いなく円卓で最も高い総合力を持つロステアール・クレウ・グランダが、為す術なくやられたんだから」  その言葉に、数人の王から小さく唸るような声が漏れた。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

296人が本棚に入れています
本棚に追加