戮力一心

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 そんな金の王を見て一度だけ目を細めた銀の王が、次いで黒の王へと視線を戻す。 「ヴェールゴール王、話を進めよ」 「え? 進めるって何を? 俺が殺すの頑張るって話で落ち着いたんじゃないの?」  きょとんとする黒の王に、白の王が口を開く。 「相手が神だとしても、条件さえ整えられれば存在を気取られない、と言ったでしょう? それなら、大切なのはその条件です。最も重要であるウロの対処を貴方に任せるしかないのですから、私たちはその条件を満たせるよう、全力で貴方をサポートしなければ」 「ああ、そういうことか。簡単に言うと、ウロを油断させることが条件なんだけど……。えーっと、例えば俺がさ、ほとんど完璧に存在を消したとするじゃん? でも、こっちの戦力考えたら、俺がいないのって絶対おかしいんだよね。それって向こうも判りそうじゃん? そしたら俺は絶対警戒されるから、まあ成功率は下がるよね、みたいな」  言ってる意味判るかなぁ、と首を傾げた黒の王に、白の王が微笑みを返す。 「ええ。つまり、貴方の存在を消しているだけではいけないということでしょう? 貴方の存在を消しつつ、あたかも貴方が存在しているように見せなければいけない。……これは、シェンジェアン王に助力を乞うべきでしょうね」 「でもさ、神様相手に幻惑魔法って成功する? 多分無理だと思うんだよね、俺。ないものをあるように見せるって、相当難しいよ? いや、見せるだけなら簡単だと思うんだけど、相手が神様ってなると、五感どころか第六感みたいなものまで含めて、全部で俺が存在してるように思わせなきゃいけなくない? 神様相手にそんなこと、できる?」  そう言って黒の王が薄紅の王を見る。視線を受けた薄紅の王は、ゆっくりと首を横に振った。 「いいえ、恐らく無理ねぇ。無を有であるかのように見せることはできるけれど、無を有にすることはできないわ。それを事実にできない以上、神に連なる種族には見抜かれてしまうと思うの。……もし通用するとしたら、有を別の有にする魔法、かしらねぇ。でもこれも、元がかけ離れていればかけ離れているほど完成度は下がるわ。貴方の場合、元が元だものねぇ……」  薄紅の王が難しい顔をしたのを見て、黒の王が白の王に向かって肩を竦めた。 「それなら、俺に策がある」  突如として割り込んできた声に、その場の誰もが声の方を見た。そして目に入ってきたその光景に、金の王が思わず呟く。 「……ロンター宰相?」  赤の国の宰相であるレクシリアが、赤の国の門の前に立っていたのだ。
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