昔ばなし

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 其の四・サクラヤマのぼれ  地元でよくやる遊びに、『サクラヤマのぼれ』というのがある。  まず鬼がふたりいて、ひとりはみんなを追いかけて捕まえる。もうひとりは地面に描かれた大きな丸、『サクラヤマ』と名付けられたすぐ近くに陣取っている。  捕まえる時に鬼は「トリとーった、サクラヤマのーぼれ」と声をかける。  捕まった子たちは、地面に描いた『サクラヤマ』に詰め込まれる。丸に入れられた子たちが多くなると、縁に近い場所にどうしても寄ってしまうことになる。そこを、更に鬼のどちらかが「取った!」と触ると、その子が次の鬼になる。  逃げ回っている子のうちの誰かが、サクラヤマに捕えられた子どもの誰かに触れることができれば、その子は外に出ることができる。その時、『雨止ぁんだ』と叫んでタッチする。しかし、見張りの鬼に捕まってしまったら、丸の外から助けに来た子も捕えられてしまう。  サクラヤマ、と呼ばれる場所が実際、津久根神社からあまり遠くない山の上にある。  山の中なのに、石垣が積まれた上が広場程度に平らになっていて周りに桜が植えられている。元々、何かの建物があったらしいのだが、不浄の場としてしか、みなの記憶に残っていない。  遊びはそこの故事に由来しているらしい。
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