昔ばなし

6/6
前へ
/106ページ
次へ
其の五・つくねじまの目玉ババア    これは従兄のシゲ(にい)やその友だちから聞いた、元白鳥になってからの話。  つくねじま、というのは団地の名前で、大山の津久根島神社から名前を取られた。  団地のまん中あたりに、目玉ババアは住んでいる。高い塀に囲まれた家で、門はたいがい閉まっている。塀の上には鉄条網が張られ、尖ったガラスが埋め込まれている。門にはステッカーが沢山貼ってあって、家の周りの沢山ののぼりが目印。屋敷の中に細くて高い鉄塔があって、頂上には黒い『見張り箱』がついている。監視カメラで、目玉の絵がついている。人があまり家に近づくと、警報機が鳴るという人もいた。たまに出てきて、目が合った人がいるとつばを飛ばして威嚇する。ババアはカラスを手下にしていて、よく、長いままの竹輪をくわえたカラスが屋根に止まっている。  うちのケイ兄とシゲ兄が数人の友人とともに、夏の夜に肝試しに目玉ババアの家まで出かけて行って、みんな揃って泣いて帰って来たことがあった。  何があったかは『覚えてない』のだそうだ。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加