過去があるとか、忘れたほうがいいとか。

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 子供の物心着いた時には、父親はいなかった。 『お前なんて産まなきゃ良かった』  そういわれて、子供はどう返せばよかったのだろう?  まだその答えも持たず、母親しか知らない子供はただ『ごめんなさい』を繰り返していた。  それでも、子供を捨てずにいたのは、彼女に母親としての気持ちが残っていたのか、それとも犯罪者になりたくないが故、仕方なくなのか。  もう聞くこともできない。  けれど彼女ばかり責めることも出来ない。  子供には不思議な力があった。
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