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たい焼き論争、と言うべきものがあった。
直木賞を取った作家があるエッセイに「食べたたい焼きにあんこがしっぽまで入っていて非常にうまかった」という内容のことを書いたところ、賛否両論に分かれた、というものだ。
「甘ったるいたい焼きの口直しにあんこはあえて入れないものだ」
「しっぽが薄くなっていないと持ちにくく、あんは入れないほうがいい」
「しっぽにあんが入ってないと分けて食べる時に不公平になる」
「しっぽまであんが入ってるとより高級感が出る」
このような意見が大真面目に交わされたのである。
また、日本で一番売れた歌の主人公は、たい焼きだ。
「およげ!たいやきくん」である。
毎日鉄板の上で焼かれるのに嫌気が差したたい焼きが店主とケンカして海に逃げ、自由を謳歌するも最後は釣り上げられ、食べられる。童謡でありながらサラリーマンの悲哀も感じさせるこの歌はシングルで500万枚という空前の売り上げを記録した。
たい焼きは明治時代に誕生した。今川焼きを作っていた麻布十番の店が繁盛せず、様々な金型を試していたところたどり着いたのがめでたい、で縁起物とされる鯛だった。尾頭つきの鯛を型どったたい焼きは飛ぶように売れたという。
たい焼きの何がここまで日本人の琴線に触れるのか。
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