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茶葉街と琥珀と旅猫
黒猫さんは旅猫です。
小さな旅行鞄と使い込まれた鼈甲吸口のパイプを片手に、今日は夕陽をお供に茶葉街に立ち寄りました。
店主は好い香りの刻み煙草と共に、黒猫さんの吸口とおんなじに輝く鉱物を卓に置きました。
何だろう、と夕陽が一際目立つ光を放ちますときらきらと深い深い蜂蜜色に輝きました。
黒猫さんが店主に注文していない、と毛深い貌を伺いますと。
「此れは茶葉を抽出して出来た《琥珀》と云う結晶さァ、炭酸に落として一気に煽る、咽に効くんダ、旅猫サンの無事を祈りまさァ。」
陽気な音楽が街の何処からか流れて来ました。
夕陽もいよいよアケビ色の空に欠伸をして、眠そうに沈んで行きます。
黒猫さんは夕陽の最後の一閃に《琥珀》をくるくると照らしました。黒猫さんは《琥珀》を食べてしまうのでしょうか?それとも……。
黒猫さんの旅はまだまだ続きます。
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