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雨と珈琲と旅猫
黒猫さんは旅猫です。
小さな旅行鞄と丸い象牙で出来たパイプで紫煙を燻らせ乍ら街から街へ旅して来ました。
冷えた秋雨の粒が宿の屋根を叩きます。
宿の主人が安い珈琲を淹れてくれました。味があんまりしません、だけどお腹はぽかぽかです。
黒猫さんは毛むくじゃらのぽかぽかお腹をさすり、顔をにゃめにゃめ。雨が降る訳です。黒猫さんが顔を洗うと大抵、雨がざあざあ降って来るからです。
いつもお供しているお月様も此れには呆れ顔で雲の隙間でふて寝しています。おや?黒猫さんは自分で珈琲を淹れる様ですよ……?
黒猫さんは上手く珈琲を淹れられたのでしょうか?
お月様も段々と雲を退かして、興味津々と言った風に近付いて来ます……。黒猫さんが珈琲を飲む頃には真ん丸な十六夜のお月様が見える筈です。
どんな味になったかは、お月様に聞いてご覧なさい。
黒猫さんの旅はまだまだ続きます……。
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