5.川のほとりで

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「とても…綺麗なところですね。」 「田舎でしょう?」 「すごく、素敵です。山があって、川があって…」 「ああ、もう少し行ったところに橋があるんだ。そこからは夕陽が川の方に沈むのが見えて、朝は山から日が昇るのが見えます。今なら日が沈むところが見えるかも。」 立ち止まった篠原は、その方向を指さす。 一緒に立ち止まったすみれは、その様子を想像して、とても素敵な光景なのだろうなと思った。 「見てみたいな。」 けれど橋の上に着いたころには日は沈んでいて、沈みかけの淡い紫色のグラデーションが空いっぱいに広がっているだけだった。 橋の上からすみれは、川の奥に広がる風景を見つめる。 緩やかにカーブする川と、青くてきれいな流れ。 空の光が水面にきらきらと、反射していた。 「沈んじゃったね。」 「でも…綺麗…。」 「うん。」 「この先にね、卵の無人販売があるんだ。おばあちゃんの錦糸卵は美味しいよ。すみれちゃん、ちらし寿司好き?」 まるで、言葉が途切れることを恐れるように篠原は話し掛けてくる。 「篠原さん、…」 「なに?すみれちゃん?」 篠原さんといったすみれに、すみれちゃんと返す篠原。 「いいんですか?」 ふ、とすみれの足が止まる。 「なにが?」 篠原が、足を止めたすみれを振り返る。 すみれは、篠原の顔を見たけれど、逆光で影になっていて表情がよく分からなかった。
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