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7.すれ違い
恋人同士なんだから、いいでしょう?と同じ部屋でお布団を並べられてしまって、違います、と否定することは出来ず、布団の上にちょこんと座るすみれだ。
「ごめんね、葉山さん。」
「いえ…、ですよね…。」
お風呂上がりの篠原は、いつもと全く違って、ラフなロングTシャツとコットンパンツで、髪も下ろして、首からタオルをかけている。
そのあまりにもプライベートな雰囲気に、すみれはくらくらした。
篠原を真っ直ぐに見ることは出来なくて、つい俯いてしまう。
これって、本当に彼女とかじゃなきゃ見ない光景よね?
布団の上にちょこんと座っているすみれを見て、篠原はふいっと顔を逸らした。
風呂上がりのすみれさん…破壊力ありすぎ…。
湯上り独特のほわほわとした感じと、お化粧を落とした後のつるっとした肌と、ふんわりと香るボディーソープかシャンプーのいい匂い。
きっと親しい間柄でなくては、見られないものだろう。
「こんな状況、出来上がったカップルでもなかったら楽しくないよね。」
目を合わせずに、低い声でそんなことを言う篠原に、どうしよう、嫌がられているのかな…とそんな風に感じて、胸をぎゅっと掴まれる心地になったすみれだ。
綺麗に2つ並んだ布団を、どうしようかと思っていたら、篠原はささっとそれを部屋の端に動かして、すみれににこっと笑った。
「なんも、しないから。」
また…だ。
胸がぎゅっとして、苦しい。
すみれは気づいてしまった。
篠原に距離を置かれるようにされると、苦しいのだ。
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