7.すれ違い

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寝る準備で、自分のバッグをがさがさしている篠原の後ろ姿を見て、すみれの鼓動は高まる。 シンプルな服装だから分かる。 篠原の背中の広さ。 こんなに男性っぽい人なんだ…。 「えっと…、寝ようか?」 「はい…。」 そう返事をしてすみれは布団に入った。 「眩しくない?」 篠原の枕元には、小さな間接照明が置かれている。 そんなことにまで気を使ってくれる篠原を、好きにならない訳がなかった。 「ん、大丈夫です。」 これは期間限定の関係。 だから、帰ったらもう何もないこと。 そう思うと、すみれは目元が熱くなってしまうのを止めることができなかった。 どうしてこんなことを引き受けてしまったんだろう。 その時は自分がお休みでも、行くところも一緒にいる人もいなくて、問題はないと思ったから。 まさか、こんなことになるとは思わなかったから。 すみれは布団をキュッと掴む。 そのことが、こんなにつらくなるなんて思わなかったから…。 「葉山さん…?」 夜の帳の中に、柔らかい光と優しい篠原の声。 コツ、コツ…と部屋のどこかで、秒針を刻む時計の音が聞こえる。 「はい…?」 「寝れない?」 「いえ…。」 夜はどうしてこんなにも人を近くするのだろうか。 昼間に同じ距離でいるよりも、この夜の中に包まれていると、距離を近く感じて…困る。
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